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アジア新市場開拓のためのデータ活用術

サマリー

本レポートでは、市場規模の推定・ターゲットの絞り込み・営業データの活用という3つの主要テーマに沿って、新規市場開拓の成功に必要なステップを整理。

企業は「誰に・何を・どのように」売るのかを明確にし、顧客との接点を最大限に活かしながら戦略的にアプローチすることが求められる。データに基づいた意思決定と営業活動の最適化が不可欠となる現代 –
成功事例を交えながら、東南アジア市場での新たなビジネス機会をつかむためのポイントをご紹介します。

新市場特定と攻め方を決めるためのデータ活用術

Speedaのリサーチプラットフォームとは

Speeda(※東南アジア版)は、東南アジア各国の業界動向、最新の事業機会、企業の財務情報にアクセスできるリサーチプラットフォーム です。各国の政治・経済の動向の四半期毎のアップデートや、半導体・データセンター・EV・再生可能エネルギーなどの成長分野に関するレポートを提供し、企業の市場開拓を支援しています。


−背景−
新市場を特定する必要性:変化する市場環境への適応

近年、企業が新市場の特定に取り組む重要性がますます高まっています。その背景には、市場環境の不透明さと急速な変化があります。

例えば、タイの自動車市場では2024年の販売・生産台数が前年比20〜25%減少 する一方、BEV(電気自動車)の新車販売台数に占めるシェアは14〜15%に拡大し、業界構造の転換が進んでいます。これにより、日系企業は市場の縮小と競争の激化 という二重の課題に直面している状態です。

こうした変動は自動車業界にとどまらず、デジタル化や脱炭素対応に加え、直近の対中貿易戦争や中国企業の東南アジア市場進出など、企業戦略の抜本的な見直しを要する大きな変化は、あらゆる産業に影響を及ぼしています。

企業が持続的に成長するためには、変化を正確に捉え、新たな事業機会を見つけることが不可欠です。既存市場に依存するのではなく、新市場を特定し、適切な戦略を構築することが競争力の鍵 となるでしょう。
全社戦略レベルでの議論もある中で、東南アジア各国のカントリーヘッドや地域統括では、積極的にアジア各市場での勝ち方を描き、取り組みを進めているのが現状です。


新規市場開拓のアプローチ:既存技術の応用と戦略的展開

企業が新市場を開拓する際の有効なアプローチ の一つとして、「既存の商品技術を新しい市場に展開する」方法が挙げられます。これは、企業が持つ強みを活かしながら、新たな市場機会を探るアプローチ方法です。

例えば、1997年のアジア通貨危機 におけるタイローカルの自動車部品メーカーの医療機器分野への参入を見てみましょう。当時、自動車市場が低迷する中で、同企業は異業種への展開を決断し、新たな事業機会を探索しました。この事例は、市場環境が厳しい時こそ、既存の枠にとらわれない戦略的な事業転換が重要であることを示しています。


GTM戦略(Go to Market戦略):新市場進出を成功させるための3つの要素

新市場で成功を収めるためには、GTM戦略(Go to Market戦略) の3つの要素を明確にすることが重要になります。

  1. ターゲット市場を決める(Who:誰に売るのか)
  2. 製品・サービスを設計する(What:何を売るのか)
  3. 販売チャネルを決める(How:どのように売るのか)

「誰に」「何を」「どうやって売るのか」を明確にすること が、新規市場での成功を左右する鍵となるでしょう。

しかし、多くの企業が陥りがちな失敗として、「どのように売るか(How)」に注力しすぎることが挙げられます。現在日系向けに展開している商品・サービスを、非日系市場にも展開しようと考え、「どのように売るか(How)」に注力してしまう、ということです。

販売手法やマーケティング施策に意識が向きすぎると、「誰に売るのか(Who)」や「何を売るのか(What)」といった根本的な戦略がおろそかになり、成果が上がらない ケースが多く見られます。

そして、この「どのように売るか(How)」を考える・施策を打つことは、何かに取り組んでいる錯覚に陥る盲点となります。マネジメントとしては、営業担当・マーケ担当が顧客不在のままでHowの工夫に拘泥していないか目配りする必要が出てきます。

そのため、市場開拓の最優先事項は、「だれに(ターゲット市場)」を明確にし、その上で「なにを(提供する価値)」を定めること。適切な市場選定と製品・サービスの適合性を見極めた上で、最適な販売チャネルを選択することが、新規市場開拓の成功の鍵となるでしょう。


1)市場規模の推定方法:新市場開拓の第一歩

市場・顧客理解を進め、勝ち筋を見つけるためのステップ
0)新市場の仮説
1)市場規模の推定
2)業界構造の理解
3)顧客ターゲットの明確化

新市場の仮説があれば、最初のステップは、市場規模の推定をしてみましょう。いくつかある算定方法の中でも、シンプルなのは 「ボトムアップアプローチ」「トップダウンアプローチ」 の2つです。

【ボトムアップアプローチ】 は、個別データを積み上げて市場規模を推定する手法。例えば、ペットのグルーミング市場なら、ペットオーナー数・利用者率・年間利用回数・平均利用料金などを掛け合わせて算定できます。この方法は、データがそろえば比較的正確な市場規模の算定が可能となりますが、詳細な情報の入手が難しい場合や新規市場でデータが不足している場合には、限界があります。

【トップダウンアプローチ】 は、既存の大きな市場データを基に推定する方法。例えば、東南アジア主要国のサングラス市場を知りたい場合、同地域のメガネ市場のデータを参考に推定することができます。
この手法のメリットは、既存の信頼性の高いデータを活用できるため、簡易に市場規模を算定できることです。しかし、細分化の過程で仮定が多くなるため、推定値の精度には注意が必要となるでしょう。


市場規模算定の重要ポイント

  1. 正確なデータの入手
    東南アジアでは統一されたデータベースが少なく、情報収集の難易度が高いため、複数の情報源を活用し信頼性を精査することが重要となります。
  2. 適切なセグメンテーション
    誤った市場分類は過大・過小評価につながるため、各セグメントのニーズや行動を正確に分析し、適切に分類する必要があります。
  3. 地域特性の考慮
    国ごとの規制や消費者嗜好が異なるため、市場を一括りにせず、各地域の特性を反映した分析が不可欠です。

2)業界構造の理解

市場開拓においては、バリューチェーンの把握にも重要性があります。新規事業を展開する際には、各業界の主要プレイヤーがどの国に存在し、どのような役割を担っているのかをリサーチする必要があります。また、商流の流れや競争環境 を分析し、マーケットでどの企業がどのように事業を展開しているのかを把握することで、最適な市場参入戦略を構築できます。徹底した情報収集が、新市場での競争優位性を確立する鍵となるでしょう。


3)顧客ターゲットの明確化と営業戦略

新規開拓において最も重要なのがターゲット顧客の明確化です。具体的に「どの企業をターゲットにするか」「どの企業に営業をかけるべきか」を慎重に検討し、売り込み先の優先順位をつける必要が出てきます。

【新規開拓の一般的な手法とその課題】
一般的な新規開拓の手法には以下のようなアプローチがありますが、同時に課題も伴います。

  1. できるだけ多くの企業にアプローチする
    • 確率論的に受注を狙っても、空振りが多く、組織の疲弊につながってしまう。
  2. 営業部門の経験や肌感覚に頼る
    • ある程度の精度は期待できますが、企業数が増えると情報の正確性が低下してしまう。

【データ活用による効率的なターゲティング】

これらの課題を解決するためには、データを活用し、受注の可能性が高い企業を特定することが重要となります。具体的には、小さなセグメントに分けて、それぞれに最適なアプローチを行うことで、より効率的な営業活動が可能となるでしょう。

ターゲットを絞り込むメリット

  • 結果が早く分かる : スピーディーに仮説検証が可能
  • 営業トークが洗練される : 同じ特徴を持つ企業群へのアプローチが効率化
  • 営業の成功確率が上がる : 優先順位が明確になり、無駄な営業が減る

ターゲットの絞り方

ターゲット企業の選定にあたっては、以下の基準で優先順位をつけることで、より確度の高い営業戦略を構築することができます。

  • 東南アジアのどの国・地域に焦点を当てるか
    • 例:タイ、ベトナム、インドネシアなど、成長の見込まれる市場を特定
  • 業界ごとの市場動向を分析する
    • 例:EV市場、再エネ市場、データセンター市場など、今後の成長分野に着目
  • 企業規模や業績、投資意欲などのデータを活用する
    • 例:売上規模、利益率、投資傾向など、企業ごとの財務状況を分析


参考:Speedaを活用したターゲットの絞り込み

ステップ1)

ステップ2)

ステップ3)

まとめ

新市場開拓は、一部の成長企業だけのテーマではなく、多くの企業にとって避けて通れない経営課題となっています。市場環境の変化が激しい東南アジアでは、これまでの経験や感覚に基づいた判断だけでは、事業機会を見誤るリスクが高まっています。だからこそ、「どの市場を狙うのか」「どの顧客に、どのような価値を提供するのか」を、客観的なデータに基づいて整理することが重要です。

市場規模の推定、業界構造の理解、ターゲット企業の明確化といった一連のプロセスは、単なる分析作業ではなく、勝ち筋を描くための戦略設計そのものと言えます。特に国ごとの特性差が大きい東南アジアにおいては、断片的な情報に頼るのではなく、信頼性の高いデータを横断的に活用しながら、仮説検証をスピーディーに進めていくことが競争力につながります。

新市場を「なんとなく」攻めるのではなく、「勝てる可能性が高い市場」から優先的に取り組むことが、限られたリソースを最大限に活かす鍵となります。本レポートが、東南アジアにおける新たな市場機会を見極め、次の一手を検討するための実践的なヒントとなれば幸いです。

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