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大手商業銀行のビジネスリサーチ部門における活用例

サマリー
「スピーダUser‘s Voice」タイの大手商業銀行であるLand and Houses Bank(以下、LH Bank)で、コーポレートストラテジー・イノベーションSenior Vice President(上級副社長)を務めるタナポン・スリタンポン博士より、ビジネスリサーチチームでのスピーダの活用事例をご紹介いただきました。
LH Bank|スピーダ事例紹介
「スピーダUser‘s Voice」事例紹介シリーズでは、ASEAN地域で事業を展開する皆さまの事業概要や直面されている課題、そしてスピーダをどのような場面でご活用いただいているかご紹介しています。
今回は、タイの大手商業銀行であるLand and Houses Bank(以下、LH Bank)で、コーポレートストラテジー・イノベーションおよびビジネスリサーチ部門のSenior Vice President(上級副社長)を務めるタナポン・スリタンポン博士にお話を伺いました。
LH Bankについて
タイの金融業界において重要なポジションを占めており、革新的なソリューションを次々と提供しています。時代とともに変化する顧客ニーズに柔軟に対応し、信頼されるアドバイザーとしての地位を築いてきました。
特に、持続可能な社会を実現することに力を入れており、2023年までに温室効果ガスの排出量を25%削減するという明確な目標を掲げています。その一環として、環境負荷を抑えるためのフレームワークの導入や、環境に配慮した取り組みを行う企業への融資サポートといったグリーンビジネス支援が挙げられます。
社内の意思決定と社外調査を支えるナレッジチーム
ーチームの業務内容について教えてください。
私たちビジネスリサーチチームは、企業戦略・イノベーション部門に所属し、社内の各部署や社外クライアントのための調査・分析業務を担っています。産業動向のリサーチに特化した8名のアナリストで構成されており、LH Bankにおけるスピーダの主要なユーザーでもあります。
当チームの役割は、リサーチを通じて社内外の意思決定を支援することです。単なる情報提供にとどまらず、イノベーションの起点としての機能も果たしています。
社外では、グループ企業をはじめ、SCB(サイアム商業銀行)やカシコン銀行などの取引先企業、さらには提携・関連機関といった幅広いステークホルダーに対して情報を提供しています。
社内においては、各事業部門や経営陣、各種委員会に加え、CEOからの調査依頼も受けています。たとえば、経済や特定業界の動向が当行の事業にどのような影響を与えるかといった分析を行い、銀行としての戦略立案に役立てています。
ーどのようなリサーチ依頼があるのですか?
具体例としては、ロシア・ウクライナ情勢のような国際的な出来事が、経済や産業にどのような影響を及ぼすか、さらにはクライアントや市場にどのような波及があるかといった調査・分析を行っています。こうした調査から得られたインサイトを活用し、戦略や計画に反映させていくのです。
また、証券部門やファンドマネジメント部門など、社内の他部門とも密に連携し、収集した情報を相互に共有することで、組織全体として多様な情報ニーズに応えられる体制を整えています。
リサーチ対象となる業界は、従来の主要産業だけでなく、人工知能(AI)やサイバーリスクといった新たなテクノロジー分野にも積極的に取り組んでいます。なかでも重点的に取り組んでいるのが、ESG(環境・社会・ガバナンス)のうち「環境」に関するトピックです。例えば、製造工程におけるCO₂排出量削減させることで、環境負荷の低減を目指す企業からのニーズに合わせ、「トランジションローン(移行期ローン)」に関する調査やレポートを作成しています。このように、クライアントに対して具体的かつ実践的な提案を行うことで、持続可能な戦略の意思決定を支援しています。
多様なデータプラットフォームを統合し、分析を加速
ー調査の内容について教えてください。
私たちのチームでは、精度の高い分析結果を継続的に提供するため、「一次情報(政府機関などから発信される生の情報)」と「二次情報(分析・整理された情報)」を活用しながら、商業銀行における戦略の中核である「経済状況」「業界トレンド」「テーマ別インサイト」の3つの視点から評価を行っています。
一次情報は、分析の基盤としては欠かせないものですが、それだけでは不十分なこともあります。そのため、Bloomberg、Sustainalytics、FactSet などのグローバルなデータプロバイダーや、ローカルのデータサービスから得られる二次情報もあわせて活用しています。こうした多面的な情報収集によって、幅広いデータを収集・分析が可能となり、分析精度を高め、クライアントや社内各部署からの多様なニーズにも柔軟に対応できるようになります。
たとえば、ESG関連の調査には、上場企業の排出量データをBloomberg から取得し、対象企業における排出削減への取り組みや、各国の規制動向などの詳細情報を別のプラットフォームから収集しています。こうして集められた情報をチーム内で共有する社内データベースに蓄積していくことで、日々の調査活動を支える重要なリソースとなっています。これらのデータをもとに、正確かつ実践的なインサイトを導き出すことが、私たちの分析業務の基盤となっているのです。
スピーダがリサーチ力を高める
ースピーダは調査の中でどのような役割を果たしていますか?
スピーダは、数ある情報ソースの中でも、日々のリサーチ業務で頻繁に活用しているツールのひとつです。最新の業界情報を収集できることに加え、新興分野から既存産業まで、国内外を問わず幅広くカバーしている点が大きな魅力です。
市場全体の動向を把握するには、信頼性の高い二次情報を収集することがとても重要です。スピーダのレポートは、信頼できる情報源であることはもちろん、業種別・国別に細かく分類・整理されているためわかりやすく、特定の業種・地域に関する必要な情報を迅速に見つけることができます。
たとえば、タイ・ベトナム・中国といった特定の地域における自動車業界を調べたいときも、スピーダを使えば、数クリックで業界特化のレポートにたどり着くことができます。
ーレポートで良い点があれば教えてください。
業界の全体像を把握するためだけではなく、バリューチェーン・サプライチェーン情報なども含まれていること、さらにデータが可視化されており、実用的なだけではなく、私たちの分析に多角的な視点を与えてくれます。
レポートはすでに構成が整っているので、そのまま自社の資料として活用できるレベルの完成度があり、定期レポート作成業務の効率化にも大いに貢献しています。チームとしてのアウトプットの質も向上し、分析結果の信頼性や説得力を高めることにつながりました。
また、スピーダのレポートは既存産業だけでなく、新興テクノロジーや新産業に関するトレンドレポートも豊富に揃っているので、成長市場における変化を先取りするための重要な情報源にもなっています。
グローバル × ローカル視点でバランスの取れた分析を実現
ースピーダの強みは何ですか?
地域レベルの業界分析を行う際、スピーダは常に候補に挙がる主要なデータソリューションのひとつです。
かつては、企業の詳細な財務情報を取得するために、タイ国内で広く利用されている「Corpus X」を活用していました。Corpus X はローカル企業の情報収集には非常に有用ですが、グローバル企業やその親会社に関する情報が必要な場合には、現在ではスピーダを主に利用しています。スピーダとローカルの情報ソースを併用することで、グローバル企業とローカル企業の両面から情報を捉えることができ、よりバランスの取れた包括的な分析が可能となりました。
膨大なリサーチ業務を支えるリサーチサービス
ーリサーチサービスを利用されたエピソードについて教えてください。
※スピーダのCustomised Research Service(CRS)は、オンデマンドでリサーチ依頼ができるデスクトップ型の調査サービスです。スピーダのデータベース上に情報がない場合でも、要望に応じてアナリストが調査を行います。
データベースに加え、スピーダが提供する「カスタマイズリサーチサービス(CRS)」は、特定のテーマについてより深い調査が必要な場面で、チームの調査の強力に支援してくれる存在です。
最近では、「米中貿易摩擦が生産拠点の移転や先端技術産業の拡大に与える影響」といった、メガトレンドに関するリサーチを依頼しました。半導体製造やデータセンターの拠点が新たな地域へ移行する流れは、タイの産業構造や当行の戦略にも大きく関わる重要なテーマです。
このような市場動向の要因や、地域市場への影響を正確に把握し、社内関係者や経営陣へ適切な指針を示すことは、私たちの業務にとって極めて重要です。しかし、社内の限られたリソースで膨大な情報を効率良く調査するには限界がありました。
10〜20ページに及ぶ情報の収集をチームのアナリストに任せるよりも、彼らにはその情報をもとにしたデータ分析や、追加的なインサイトの抽出に集中してもらうほうが、リソースの使い方としてより合理的です。スピーダのCRSを活用することで、調査にかかる時間を削減させることで、チームのリソースをより有効に活用することができました。
スピーダから納品されたリサーチレポートは、当初の期待を大きく上回るものでした。レポートには、海外直接投資(FDI)の動向や地域産業への影響、関係者にとってのリスクや機会といった観点からの丁寧な分析が含まれており、市場環境の全体像と今後のアクションが明確に整理されていました。このレポートをもとに、経営層や現場部門など社内の関係部署に対しても、明確な指針を提示することができました。
今回の調査を通じて、スピーダの強みをあらためて実感しました。強力なデータベースだけでなく、マクロレベルの複雑なリサーチにも迅速かつ的確に対応できる点は大きな価値です。膨大な情報を短時間で収集・分析し、実行可能な戦略立案に必要な判断材料を提供してくれました。
結果として、社内アナリストはより戦略的な業務に集中でき、業務全体の質を高めることにもつながりました。スピーダのカスタマイズリサーチは、スピード、効率、そして人的リソースの最適化という点でも、私たちにとって非常に有益なサービスです。
次なる目標:優れた意思決定を導くリーディング・シンクタンクへ
ーチームの次の目標について教えてください。
私たちは今後、社内の経営層だけでなく、クライアント企業にとっても信頼されるシンクタンクとして、支援の領域をさらに広げていきたいと考えています。変化の激しい産業環境を先読みし、戦略的な意思決定に役立つ知見を提供するハブとしての機能を強化し、アドバイザリーとしての価値をより高めていくことを目指しています。
ESGをはじめとする新たな潮流の中で、企業や中小企業は温室効果ガスの排出削減など、国際基準との整合性が求められるようになっています。特に、欧州連合のように環境規制が厳格な地域に輸出する企業にとっては、カーボンアカウンティング(炭素会計)の基準を正しく理解し、変化していく環境に柔軟に対応することが不可欠です。
こうした背景を踏まえ、私たちは業界の変化を先取りする知見を提供し、企業が持続可能な成長を実現できるよう、明確なコンセプトと実践的なインサイトを発信していきます。
スピーダで、リサーチ業務を加速させましょう
市場動向や業界情報をすばやく把握し、戦略的な意思決定を支える経済情報プラットフォーム「スピーダ」。レポートの内容や、実際にどのようにリサーチに使うことが出来るのかご興味のある方はお気軽にご相談ください。
戦略的な意思決定で、東南アジアでのビジネスを加速させましょう。