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Industry Reports

ASEANの自動車市場 – EV・自動運転・ローカリゼーションの最新動向

サマリー

2024年の世界およびASEANの自動車市場は、EV普及の加速、自動運転技術の進展、ローカリゼーション戦略の強化が主要トレンド。中国とインドが乗用車市場をけん引し、ASEAN各国では輸入依存と国内生産強化の動きが進む。日本ブランドが市場を支配する一方、EV分野では中国メーカーが急成長している。

ASEAN-6の自動車市場動向 – EV普及・輸入依存・ローカリゼーションの課題と展望 

| 🇮🇩 EV普及と環境規制強化 – インドネシアの排ガス基準と政策の現状

インドネシアはASEAN-6の中で、乗用車の生産と販売の両面で圧倒的な地位を築いている。これは、大規模な人口と成長する中間層の需要に支えられている。しかし、自動車の普及率は依然として低く、今後の市場拡大の余地が大きい。

生産は主に4×2車両に集中しており、価格に敏感な消費者層をターゲットにしたコスト効率の高いモデルが主流となっている。国内の自動車産業は組立中心で、需要が集中するジャカルタ周辺に生産拠点が集まる。一方、排ガス基準は国際基準に比べて遅れをとっており、政府はEV(電気自動車)の導入促進や環境基準の強化を進めている。

過去5年間の生産量は変動を続けており、パンデミックの影響で一時的に減少したが、その後急速に回復。2023年には一時的な落ち込みがあったものの、販売は2020年以降一貫して成長し、消費者の購買意欲の回復と経済成長がそれを後押ししている。これらの動向は、インドネシア自動車市場の回復力と、変化する消費者の嗜好に対応する業界の柔軟性を示している。

輸出入も安定的に拡大しており、国内の自給自足体制の確立と世界市場からの需要の増加が後押ししている。主要な輸出先はフィリピンや中東諸国で、輸入の多くは日本、韓国、ドイツからのものとなっており、これらの国との貿易パートナーシップが確立されている。

市場は非常に集中しており、トヨタダイハツスズキといった日本ブランドが乗用車市場の95%以上を占めている。一方で、中国ブランドが新規参入し、現地に製造拠点を設立する動きも見られ、競争環境に変化をもたらしている。EV市場の拡大や環境規制の強化が、今後の成長を左右する要素となるだろう。

| 🇲🇾 マレーシアのローカリゼーション戦略とは?国産部品調達率90%超の実態

マレーシアはASEAN地域で乗用車の生産量と市場規模が第2位の国である。市場は、プロドゥア(Perodua)プロトン(Proton)という国産ブランドが中心で、政府の税制優遇やローカリゼーション政策の支援を受けている。これにより、外国ブランドと比較して競争力のある価格設定が可能となり、市場シェアを大きく獲得している。

ローカリゼーション戦略の強化によって、国内のサプライチェーンが発展し、国産メーカーの部品調達率は90%以上に達している。一方、外国ブランドに対する高い物品税がコスト負担となり、市場参入の障壁となっている。

「国家自動車政策2020(National Automotive Policy 2020)」では、次世代車両、人工知能(AI)、IoTの活用を推進し、マレーシアの自動車産業を高度化することを目指している。この一環として、2027年までに国内組立EV、2025年までに輸入EVの税制免除を実施し、EV市場の発展を促進している。

生産と販売は2021年から2023年にかけて回復し、安定した経済・政治環境のもとで成長が続いた。しかし、2024年は世界経済の減速や消費支出の縮小の影響を受け、若干の縮小が見込まれている。

輸入車は2015年以降減少傾向にあり、これはマレーシアの国内生産能力の向上を反映している。2021年には一時的に輸入が増加したが、これは税制優遇措置や特定車種の需要増加によるものだった。

プロドゥア(Perodua)とプロトン(Proton)は市場の大部分を占め、低価格と高いローカリゼーション率を武器に競争力を維持している。プロトン(Proton)は吉利(Geely)との提携によりSUV市場での競争力を強化。ホンダやトヨタなどの外国ブランドもセダンやSUVなど特定の市場セグメントに特化し、安定したシェアを維持している。

政府の政策支援により、マレーシアの自動車産業は国内生産を強化し、外国ブランドの市場参入を促している。DRB-HICOMのような企業が請負製造を担い、国内外のメーカーが多様な車両を市場に供給できるようになっている。

| 🇵🇭 フィリピンの自動車市場は輸入依存 – インドネシア・タイ・中国が主要供給元

フィリピンの自動車市場は、ASEAN諸国の中でも自動車普及率が低いのが特徴である。これは、低価格のオートバイの普及や公共交通機関の利用が一般的であることに起因している。国内での乗用車生産は依然として限定的であり、市場の大半は輸入車によって支えられている。特に高級車市場では輸入依存が顕著であり、フィリピンの自動車市場が純輸入市場であることを反映している。国内生産は主に日本メーカー向けの小規模な組立生産に限られており、国産モデルの生産はほぼ皆無に等しい。

フィリピン政府は「包括的自動車復興戦略(CARS)プログラム」を通じて国内自動車製造の強化を図っており、トヨタ三菱による特定車種の生産を促進している。しかし、同プログラムは高い物品税(エキサイズ・デューティー)、TRAIN法(税制改革加速包括法)による税制の変化、世界的な競争激化、さらにはパンデミックによる影響など、多くの課題に直面しており、国内生産基盤の確立には依然として大きな障壁がある。

2021年以降、フィリピンの乗用車生産・販売はパンデミックによる需要抑制の反動や、信用供与の改善、サプライチェーンの安定化を背景に力強い回復を見せた。しかし、世界的な供給混乱や税制の変化の影響を受け、生産と販売は引き続き不安定な状況にある。市場動向を振り返ると、2018年以前は力強い成長が見られたものの、その後の自動車価格の上昇やTRAIN法による物品税の引き上げが市場の伸びを抑制する要因となった。

フィリピンは依然として自動車の大部分を輸入に依存しており、主要な供給元はインドネシア、タイ、中国である。この輸入依存度の高さは、国内生産規模の限界や、高級車市場での輸入車の人気の高さによってさらに強まっている。

市場は国際ブランドが圧倒的に支配しており、トヨタは幅広い車種展開と強力な流通ネットワークを背景に、最大の市場シェアを維持している。三菱やヒュンダイも主要な競争相手となっており、地元での組立生産への投資や革新的な製造技術を活用することで市場の多様化に貢献している。しかし、ホンダ日産といった一部メーカーは、不利な市場環境を理由に現地生産から撤退しており、国内自動車製造の持続可能性に対する課題が浮き彫りになっている。

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