Industry Reports
ASEANの自動車市場 – EV・自動運転・ローカリゼーションの最新動向

サマリー
2024年の世界およびASEANの自動車市場は、EV普及の加速、自動運転技術の進展、ローカリゼーション戦略の強化が主要トレンド。中国とインドが乗用車市場をけん引し、ASEAN各国では輸入依存と国内生産強化の動きが進む。日本ブランドが市場を支配する一方、EV分野では中国メーカーが急成長している。
| 🇹🇭 タイ政府のエコカー政策とEV推進 – 低排出車市場の成長戦略とは?
タイは世界有数の自動車生産国であり、日本ブランドが生産・販売の両面で圧倒的なシェアを維持している。国内の自動車産業はGDPに大きく貢献しており、生産された車両の半数以上が輸出されている。主要な輸出先はオーストラリア、ベトナム、フィリピンであり、政府の支援策が生産環境の強化に寄与している。メーカーへのインセンティブや輸入関税の保護策によって、国内の自動車産業は引き続き成長を遂げている。
タイ政府は、「エコカー政策」と「電気自動車行動計画(2016-2036)」を通じて、低排出車とEVの地域拠点としての地位を確立しようとしている。この政策の一環として、EVや燃費効率の高い車両に対する税制優遇や輸入関税の削減が実施されており、持続可能かつ革新的な自動車生産への取り組みが強調されている。
タイの自動車生産と販売は、2020~2022年にかけて力強く回復したものの、2023年には国内需要の低迷により若干の減少が見られた。それでも輸出は引き続き堅調であり、政府の政策の影響や世界的な半導体不足、パンデミックなどの外的要因による市場の変動が見られる。
輸出は依然として成長の主要な原動力であり、特にオーストラリアやベトナム向けが好調である。政府のインセンティブや貿易協定が輸出拡大を支援している。一方で、2023年には輸入が大幅に増加しており、これは電気自動車(BEV)の輸入関税削減の影響によるもので、タイのEV導入と統合へのシフトが進んでいることを示している。
EVの販売も急増しており、2023年には総販売台数の25%をEVが占めるまでになった。政府の「EV 3.5パッケージ」による補助金や税制優遇がEV市場の拡大を後押しし、充電ステーションの整備も進められている。
トヨタ、ホンダ、いすゞといった日本メーカーは、確立されたサプライチェーンとブランドの信頼性を背景に、市場支配力を維持している。しかし、中国メーカーはEV市場での存在感を強めており、消費者の嗜好や生産の重点に変化をもたらしている。
| 🇻🇳 ベトナムの自動車市場は発展途上 – 国内生産の課題と輸入依存の実態
ベトナムの自動車産業は、ASEAN諸国と比較して依然として発展途上にある。ローカリゼーション率が低く、輸入部品への依存度が高いため、国内生産能力は限られている。補助産業が未成熟なこともあり、多くのローカルメーカーは低付加価値の組立生産にとどまっている。市場は、日本や韓国のメーカーを中心とした海外ブランドが支配しており、ASEAN域内貿易協定(ATIGA)による関税削減が競争を激化させる要因となっている。この結果、タイやインドネシアがベトナム向け自動車輸出の主要国となっている。
こうした状況を打開するため、ベトナム政府は輸入規制の強化や国内生産促進のためのインセンティブ導入などの対策を進めている。政府支援を受けながら、国内メーカーは生産能力の向上を模索しているが、依然として海外供給業者への依存度は高い。
ベトナムの自動車生産と販売は過去10年間で大きく変動しており、経済状況や規制変更の影響を受けやすい。パンデミック後の回復期には生産が安定したものの、2023年には高金利政策の影響で消費が落ち込み、生産が減少した。さらに、ATIGAによる輸入車の価格低下を見越した買い控えが影響し、販売台数も大幅に減少した。しかし、経済環境の改善とともに生産は回復傾向を見せており、業界の回復力が示されている。
2017年以降、ATIGAの無関税政策により、タイとインドネシアがベトナムへの主要な自動車輸出国となっている。原材料や部品の輸入額も引き続き高く、国内メーカーの生産体制が確立されていないため、ベトナムの自動車市場は海外供給業者への依存度が極めて高い。この状況は、コスト削減と競争力向上のためにローカリゼーションの推進が必要であることを浮き彫りにしている。
市場は高度に集中しており、日本と韓国のブランドが販売をリードしている。ヒュンダイとトヨタはトップセールスを維持しており、安定した市場支配力を誇っている。一方、ローカルブランドのビンファスト(Vinfast)はEV(電気自動車)専業メーカーとして急成長しており、革新的な製造能力と急速な事業拡大により、市場での存在感を高めている。しかし、同社は依然として収益性の課題に直面しており、持続可能な成長戦略の確立が求められている。
このような状況にもかかわらず、確立された流通ネットワークと市場での信頼性を背景に、日本や韓国の海外ブランドが引き続き市場を支配している。ベトナムの自動車産業が今後どのように国内生産基盤を強化し、海外メーカーとの競争力を高めていくのかが注目される。
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