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Industry Reports

ASEAN二輪車市場:成長トレンドと電動化の未来

サマリー

ASEANの二輪車市場は、日本メーカーの支配と電動化の加速という大きな変革期を迎えている。人口増加や都市部の渋滞を背景に需要は拡大し、政府のEV推進策が市場を動かしている。本レポートでは、ASEAN-6の市場動向、主要プレイヤーの戦略、成長のカギを詳しく解説する。

インドネシア:世界第3位の二輪車市場、電動化は進むか?

インドネシアは、世界で3番目に大きな二輪車市場を持つ国であり、都市部の渋滞や公共交通機関の未整備が市場の大きな影響要因となっている。インドネシアでは、二輪タクシー「オジェック(Ojeks)」を含むバイクが、都市部の交通渋滞を解消する有効な移動手段として利用されている。
特にスクーターはインドネシアの二輪車市場で最大のセグメントを占めており、国内販売の大半を占めている。スクーターの人気は、燃費の良さ、低メンテナンス性、使いやすさに起因し、日常の通勤手段として幅広く受け入れられている。特に150cc以下の軽量モデルが主流であり、コストを重視する消費者のニーズに対応している。

| インドネシア政府のEV推進政策と電動二輪車市場の課題

インドネシア政府は、温室効果ガス排出量の削減を目的とし、電動二輪車の導入を積極的に推進している。2050年までにガソリンエンジン車を段階的に廃止する計画を掲げており、補助金やインフラ整備、豊富なニッケル資源を活用した国内バッテリー生産などの支援策を進めている。しかしながら、現在の市場における電動二輪車のシェアはまだ極めて低いのが現状であり、本格的な普及にはさらなる政策支援や技術革新が必要とされる。

インドネシアの二輪車市場は、過去3年間で継続的な販売成長を記録しており、これは半導体不足の解消と新型コロナウイルス後の経済回復によるものと考えられる。今後も、雇用率の改善や都市化の進展が市場成長を後押しすると予想されており、中期的にはさらなる販売拡大が見込まれている。
しかし2021年以降、インドネシアの二輪車輸出は一貫して減少しており、これは主にフィリピンなどのASEAN諸国での現地生産の拡大による競争激化が影響している。それでも、自由貿易協定(FTA)やASEAN諸国間の人口動態の類似性が、インドネシア産二輪車への一定の需要を支えている。

| 日本メーカーが95%のシェア:ホンダ・ヤマハの戦略と内燃機関モデルの未来

インドネシアの二輪車市場は日本メーカーが圧倒的な95%以上のシェアを誇る状況であり、特にアストラ・ホンダ・モーター(Astra Honda Motor)とヤマハ・インドネシア・モーター・マニュファクチャリング(Yamaha Indonesia Motor Manufacturing)が市場をリードしており、その成功の背景には、強力な現地生産能力、広範な販売ネットワーク、消費者の高いブランド信頼がある。

また、従来の内燃機関(ICE)二輪車に加え、電動二輪車市場も徐々に成長を見せており、国内外のメーカーが競争を繰り広げる状況となり、今後の成長が注目される

マレーシア:ASEAN最高の普及率、輸入依存型市場の課題

マレーシアは、ASEAN-5諸国の中で最も高い二輪車普及率を誇るが、生産規模および市場規模は比較的小さい。二輪車の普及率が高い背景には、手頃な価格、燃費効率の良さ、交通渋滞対策としての有用性がある。しかし、市場の大部分はインドネシや中国からの輸入に依存しており、マレーシアの二輪車市場は国内需要と国際供給の両方に依存する構造となっている。

マレーシアでは、スクーターやモペッドよりもオートバイが市場を支配しており、特に若年層の間で人気が高い。これは、利便性、デザインの魅力、低コストといった要因によるものだ。

| マレーシアの二輪車生産戦略、CKD方式と国家自動車政策(NAP 2020)の影響

国内生産は、高需要モデル向けのノックダウン(CKD)方式を中心に行われており、一方で完全組立(CBU)輸入はニッチ市場向けに供給されている。この生産戦略は、税制・関税政策と整合性を持たせつつ、異なる消費者層のニーズに対応する形で展開されている。また、マレーシアの「国家自動車政策(NAP 2020)」では、エネルギー効率の高い車両(EEV)を含む二輪車の生産を促進しており、税制優遇措置が設けられている。

2022年には、二輪車の生産と販売が大幅に増加し、前年からの成長モメンタムを維持した。これは、手頃な移動手段への需要増加や、新型コロナウイルスの影響からの経済回復が背景にある。しかし、2023年初頭には成長鈍化の兆しが見られ、世界経済の影響を受けて市場が減速する可能性が指摘されている。一方で、電動二輪車市場はまだ発展途上ながらも、税制優遇措置やインフラ開発の支援を受け、徐々に市場に浸透しつつある。

2020年以降、可処分所得の増加やバイクレジャーの人気の高まりを背景に、二輪車の輸入は回復している。特に、インドネシアと中国からの輸入が大半を占めており、これらの国々はパンデミック後の早期回復と貿易協定の恩恵を受けている。一方、マレーシアの二輪車輸出は依然としてわずかであり、同国の市場構造が輸入依存型であることを示している。

| 日本メーカーの市場支配、ヤマハ・ホンダの戦略とプレミアム市場の成長

ヤマハホンダといった日本メーカーは、戦略的パートナーシップを通じてマレーシア市場で圧倒的な存在感を示している。これらの企業は、強力な生産能力、広範な流通ネットワーク、消費者のブランド信頼を活かして市場をリードしている。

Boon Siew Honda は、多様な製品ラインナップを展開しており、エネルギー効率の高い(EEV認証済み)二輪車も含まれている。一方、Hong Leong Yamaha はプレミアムセグメントをターゲットとしている。Modenas は提携を活用し、製品ポートフォリオの拡充と市場での存在感を強化している。これらの戦略は、市場の細分化(セグメンテーション)とイノベーションに重点を置き、進化する消費者ニーズや規制の変化に対応することを示している。

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