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経営者に聞く「荏原製作所シンガポール久保田博通社長」 トップインタビュー

22 May 2023

 

ASEAN経営者インタビュー 

 荏原製作所シンガポール 久保田博通マネジング ダイレクター

 

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(写真左から) SPEEDA ASEAN CEO 内藤靖統、荏原製作所シンガポール 久保田博通社長

 

 

「経営者に聞く」インタビューシリーズ

 

SPEEDA ASEANでは、ASEAN市場で挑戦している皆様を、経済情報とコミュニティ作りを通してご支援しています。
「経営者に聞く」インタビューシリーズでは、ASEAN地域で事業展開する日系企業の代表者の方々に、ご自身の経営哲学や信念、海外事業経営の醍醐味(挑戦の難しさと面白さ)をお伺いし、ご本人と会社の魅力を読者の方々にお届けする企画です。

 

今回は、SPEEDA ASEAN CEOの内藤靖統が、Ebara Engineering Singapore Pte Ltd Managing Directorの久保田博通にお話しを伺ってきました。

 

 

 

シンガポールにおける事業の位置づけ

内藤:まず、荏原製作所の事業概要およびシンガポール拠点の位置づけについて教えてください。

 

久保田:荏原製作所では、カンパニー制度をとっており、祖業であるポンプ事業、半導体などの精密機械事業などの事業別のカンパニーに分かれています。

世界全体としては、ポンプを含む風水力事業がおよそ3,000億円超、精密・電子事業が約2,000億円弱くらいの売上規模感です。私は風水力事業のシンガポールの責任者として2023年1月に着任しています。

 

ポンプについて説明しますと、水が関係しているあらゆる施設や設備では、ポンプ無しでは何もできません。流体を動かし、流していくためには必ずポンプが必要ですから、生活関連の水供給処理システムから製造ラインのプロセスポンプまで、幅広く展開し当地の社会インフラを支えています。

みなさんが飲み水を飲めるように、浄水施設の水を送り出すポンプもそうですし、工場などで産業廃棄用水を循環・排水・処理させるためのポンプも重要な役割を担っています。

 

内藤:シンガポール拠点からの地域的なカバレッジとポンプ事業についてもう少し詳しく教えてください。

 

久保田:シンガポール拠点では、シンガポールに加えてバングラデシュとスリランカでの事業開発を所管しています。東南アジアの他の国には、それぞれ現地法人で製造及び営業拠点があり責任者がいますので、私はこの3か国に注力している状況です。

シンガポールでは、祖業であるポンプ事業は、マスの取り合いの側面もあって成長率を大きく伸ばすのが難しい状況が続いている一方、半導体業界にかかわる精密事業は飛躍的に成長しています。

私は北米事業での売上拡大ミッションに二年間携わり、本年から当地における風水力事業の成長角度を上げるミッションを持って赴任してきました。

 

内藤:後にご経歴を詳しくお伺いしますが、荏原製作所に入社されたのは最近なのですね。

 

久保田:2019年4月に転職してきたばかりです。前職以前のキャリアでの複数国での事業の立上げの経験を買われて参画していますので、今までとは異なる売上規模を実現させるための打ち手を、スピード感をもって実現していく任務を背負っています。

 

 

海外30年 各地域で学んだビジネスのやり方

内藤:では一度、過去のご経歴を振り返りさせていただきながら、現在地までつなげていきましょうか。もともと国外でのご勤務が長かったのでしょうか。

 

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1)新卒で松茸ハンター

久保田:91年に新卒入社した食品商社から海外畑でしたね。松茸が人工栽培できないことはご存じでしょうか。人工栽培できないために、地球上で天然の松茸産地を見つけ出してそこから日本に輸出する任務にあたりました。

 

内藤:日本以外では松茸を食べる習慣もないですよね。

 

久保田:実際は、松茸を食べるのは日本と韓国ぐらいでしたね、当時は。私は、タイ、ラオス、ミャンマー国境の「ゴールデン・トライアングル」地域で松茸産地を見つけて開発して、そこから日本への輸出ルート構築までを担当していました。

松茸は生きているので鮮度が命。採取してから48時間以内に中央卸売市場のセリ場に届ける必要があります。現地で採取したものをチェンライ、チェンマイ、バンコクと通って日本まで空輸して市場に並べるのです。

当初は、原価+送料込みで1キロ当たり800円程度の商品を約1万円で卸すので、利幅がかなり大きなビジネスでした。それを毎回10~15トン、シーズン時期の4カ月に集中して。

 

内藤:ゴールデン・トライアングルというと、麻薬の密売のイメージがあります。危険だったのでは?

 

久保田:ええ、本当に危険と隣り合わせでした。93年当時は、ミャンマー国軍と現地マフィアが銃撃戦をしていたり、山賊がいるようなところでした。その一方で、48時間以内に届けないと商品価値がなくなってしまう。銃撃戦の合間を縫って、まさに命がけの運搬でした。

当時は他国のルートに散らばった第一線の開発担当者が定期的にマカオに集合して、生存確認と休息をとっていました。携帯電話もない時代ですから、生存確認は現地集合するしかなかったですね(笑)。

私含めて新卒で採用されたのは、ラグビー、アメフト、空手などの体育会系出身メンバーばかりでした。同期はみんな、上の者の指示を良く聞いて、やり切る力があって、頑丈な奴らばっかりで。

ただ、数年やっていると、さすがに退職するメンバーも出てきて。私も4年間やり遂げたところで、転職を決意します。

 

2)海外事業立ち上げを連続で成功させていく

内藤:次も海外にご勤務ですよね?

 

久保田:次は1995年に日系の鉄の精密加工部品メーカーに転職し、香港ベースで海外事業の立ち上げ責任者を担いました。

正直なところ、鉄に関連する経験も知識も何一つなかったのですが、当時のオーナーが私のことを気に入って「一か八かで、27歳のこいつに賭けてみよう」「ダメだったらクビにすればいい」といって機会をくれたらしいんですよ、後から聞いた話では。

当初掲げられていた目標を立上げ1年目でクリアできた。前職が過酷だったこともあり「事務所でデスクに座って住所のある場所へ営業できるのに何が難しいことあるか」って思いながらやっていましたね。

タイで大型の受注が決まりタイ拠点を立ち上げ、その後ドイツの顧客、フランスの顧客を開拓しながら欧州にも販路を広げていく。受注が進んでいく中で、安価製品の製造を設ける必要があると思い中国東莞市に新工場を立ち上げさせてもらいました。

 

内藤:製造から販売まで一気通貫で海外事業の所管で実施できるようになったということですね。

 

久保田:そうです。ただ、本社の意向もあり日本で生産した部品の拡販にも力を入れるようになりました。これをきっかけに米国市場にも挑戦します。

2000年ごろですね。OA関連業界には兼ねてから伝手はあったものの「米国に挑戦するなら自動車業界、そして当時勢いのあったT社と仕事がしたい」と目標を掲げていました。最初の飛び込み営業から4年かかってT社グループの某車種用の部品を納品させていただけることになりました。

自動車業界への参入はこれが初めてだったので、大きな飛躍につながりました。

 

そのあと、自動車関連他メーカー様とのお付き合いも広がり、2005年に米国現地法人を立ち上げました。受注が先行してから法人を立ち上げるというパターンで、着実に世界各国での事業を拡大することができました。

当時、時代の流れもあり会社全体の多くを海外取引が占めていました。自動車関連メーカー様はじめクライアント様からいろいろ教えていただくことがあり、こちらでの経験が私の職業観の土台になっていると思います。

 

内藤:香港本店をベースに、タイ事務所、中国工場のマネジメントをしながら米国法人を立ち上げて、そこで米国に移住された、と。まさに八面六臂のご活躍ですね。とはいえ、そちらも転職してしまわれる。

 

久保田:はい、前職で海外事業責任者として事業を大きくしたあとに、次は取り組んだ事のないアフリカや中東市場もチャレンジしてみたい、と。また家族の事情もあり転職しました。産業ロボットを取り扱う会社で欧州とアフリカを所管する予定でした。

ただ、2008年のリーマンショックの影響で欧州市場はかなり厳しく、香港に異動してアジア事業を担当することになりました。しばらく香港をベースにやっていましたが、どうしてもまたアジア以外の市場で経験を積みたいとの思いがあり、転職を決意しました。

 

内藤:そこで前職のT社グループですね。

 

 

通算合計49カ国のプロジェクトに携わり、最大1年で世界を7周する

久保田:T社グループには2011年6月に入社しています。当時、T社グループの一部門では、海外での事業展開を独自で行うという、事業スキームの転換を試みている最中でした。思い切った改革をということで、海外事業経験の豊富な人材を外部から登用するということで、私が採用されました。

実際はT社グループのK社に参画します。同社は中型の変圧器、電気炉、ブロア、モーター等の製造販売がメインの会社です。

 

一例ですが、鉄を溶かす大型の溶鉱炉でアーク炉という設備があるのですが、同社のアーク炉用変圧器は、炉内で鉄スクラップと電極の間にアーク放電を発生させ、その熱で鉄スクラップを溶かすために使われます。

この特殊変圧器が、南アフリカのリチャード・ベイ・ミネラルズ(RBM)に納品されていました。RBMは世界有数の鉱物生産企業で、原材料の生産で1ライン800メートルはあるコンベアラインが12本あり、それぞれのラインの上流に同社のアーク炉用変圧器が備えつけられていました。超巨大な設備で圧巻でした。

 

このような僻地でのサービス体制構築や、現地拡販スキームの構築など事業開発を北中米、欧州、中東、アフリカ、アジアなどで展開し、勤務中の8年間に合計49ヵ国・地域へ訪問しました。

各製品事業に携わる技術者と連携して進めるのですが、私は1年間に最大158回飛行機に搭乗した記録が残っていて、基本的には各都市に1日〜2日しか滞在していません。

私が各都市を移動していくタイミングに合わせて、該当事業の技術者などの関係者が日本から飛んで現地入りする。

 

世界一周チケットを利用して、各都市を周回しながら効率的に複数のプロジェクトを同時並行で進めていきました。同じ拠点に2~3カ月に1度は訪問して、商談を進めたり進捗や課題を確認したりするんです。

2015年と2017年は、1年間で世界を7周し、スターアライアンスの登場飛行距離で「世界でTOP1000」に二度選ばれました。

 

内藤:そんな表彰制度があるのですね(笑)。まさに世界中を飛び回り、既存事業の改革や新しい事業を作っていらっしゃったということですね。

 

久保田:こちらの会社でも海外事業部の責任者としてとても良い待遇で仕事をさせてもらっており、良い仲間にも恵まれて楽しく働けておりました。ただ、その後公となった会社本体での不祥事他により、事業縮小の方向へと大きく舵が切られ、とても複雑な気持ちになりました。

また50代にさしかかるなかで次の10年で新しいチャレンジをした方がいいと思い、再度の転職に踏み切りました。

 

内藤:久保田さんは、つねに新しいチャレンジを探されていらっしゃいますね。しかもしっかり行動に移していらっしゃる。そこで、荏原さんにご入社されるわけですね。

 

 

改革立ち上げ屋の役割を担いシンガポールへ

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久保田:はい、2019年4月に現在の荏原製作所に入社しました。ちょうど日本本社では様々な改革を実行する中で、海外ポンプ事業の成長スピードを上げるというテーマがありました。

アメリカでは「先5年間で売上を数倍にする」というミッションを与えられましたが、自助努力では無理があると感じていました。最終的には、北米で買収という手段が講じられて目標達成への一定の目途が立ちました。

その買収では実質4~5ヶ月程度でディールがクローズしましたから、本社も意思決定は早かったです。

 

内藤:そのスピード感はすごいですね。そして今年に入ってシンガポールに赴任された、と。冒頭、シンガポール拠点では、シンガポール市場に加えてスリランカとバングラデシュを管轄していると伺いましたが、どのような事業機会があるのでしょうか。

 

久保田:スリランカは今、金融危機の状況にありますので、どの企業も様子見をしている状況かと思います。逆に、皆そのような状況だからこそ、チャンスがあると思っており、資金回収のリスクヘッジも含めて仕込みをかけているところです。

 

内藤:バングラデシュはどのような商機が?

 

久保田:バングラデシュは面白いですよ。北海道2つ分くらいの国土に1.7億人が住んでいる人口過密な国で、伸びしろが大きくてビジネスチャンスが豊富です。

2022年は日本とバングラデシュの国交樹立50周年で、それに関連して両政府共同出資の経済特区(BSEZ:Bangladesh SEZ。https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2021/cd072b90aa735644.html)が新設されました。

この第一期開発地域の販売が始まり、これから建設・設備が始まって、工業用・産業用ポンプの需要も発生しますから、我々もここに入り込んでいきたいなと狙っているところです。

 

ただ、同国は、政治経済のクリーンさを表すランキングでは、180ヵ国中147番目らしいです(SPEEDA注記:世界腐敗指数ランキング/https://www.globalnote.jp/post-3913.html)。

なので苦戦が予想されますが、政府系・財閥系・大手企業の商流に入り込む戦略を立てています。ダッカの商工会議所の現地企業ともコネクションを作っているところです。

やはり現地の言葉で腹を割った会話ができるかどうかも、ネットワークに入って行く上で重要になってくるので、現地のメンバーを1人採用予定です。

 

 

アジアと米国でのマネジメント上の気づきとは

内藤:次に、海外に進出している企業の課題とされがちな経営の「現地化」について伺います。香港と米国でのマネジメント経験が長かったと思いますが、人材のタイプや商慣習など、大きな違いがあったところはありますか?シンガポールとの違いも教えてください。

 

久保田:なかなか一般化するのは難しいですが、私の限られた経験から「あえて言うなら」ということでご理解ください。

香港人は帰属意識・愛社精神はなかったですね(笑)。当時、在籍1.5年くらいで退職していく人が多かった。香港に本土から移住して来た方たちはいろいろなバックグランドをもって来ていて、お金に対する執着が非常に強い。

よく言われるように、お金と家族・親族のみを信じている。営業という意味でも、ローカル営業スタッフは自分のネットワークの中から仕事を取ってくる。コミッションの割合の高い給与制度を活用して、数年内に営業実績を作って稼いで、昇給するか次の会社に移っていくような印象です。

堂々と給料交渉をしてきて、話がまとまらないと転職していく、という感じでした。

 

勉強になったのは、香港人の値段交渉と意思決定の仕方です。香港人は自分の条件を明確に持っていて「この条件なら買うよ、ダメなら買わん。どっちや?」といってこちらに意思決定を迫ってくる感じ。こちらが条件を満たせるならそこで即決。

一方で、日本人はちょっとズルいんですよね。買い手は、安ければ安いほどいいという姿勢で交渉して、絞れるだけ絞るし、できるだけ良い条件になるようにいろいろ注文を付けてくる。

その一方で、今度はちょっとやりすぎたかな、と思って条件を緩めてみたり。ごちゃごちゃ、ごちゃごちゃ、する。大きく違うな、と感じました。ここで、香港流(華僑)の交渉術、意思決定術を学べたことで他の国に行った時の交渉でもあまり迷いがなくスムーズにできるようになったと思います。

 

米国人も、香港人とは違う意味で、帰属意識がなかった印象です。自身のロール&リスポンシビリティの範囲外のことはやらないですし、家族と過ごす時間のプライオリティが高いので定時に帰る。未達だからもうちょっと頑張ろう、ということはないかな。

また、日系企業だといっても本社が偉い、ということがない。日系企業って、本社の指示を現場に落としこみに行くことがあると思いますが、現地のスタッフは納得しないと従わない。本社も現地拠点も対等なんですよね。

 

シンガポリアンは比較的日本人に近いのかもしれない。当社にも38年働いている社員がいます。会社が40周年なのでほとんど創業時から勤務してくれていて。愛社精神とは違うかもしれないけれど、長く働いてくれている社員がたくさんいます。

(ただ、数年でローテーションして帰任していく日本人駐在員に対して、場当たり的に上手く取り繕う社員もいるかなと思います。)

 

 

日本企業の経営の現地化に向けた「マーケット・イン」と「アカウンタビリティ」

内藤:久保田社長にとって「現地化」とはどのようなものなのでしょうか。御社としてはどのような取り組みをされているのでしょうか。

 

久保田:「マーケット・インの姿勢」と「本社へのアカウンタビリティの発揮」が、現地化を進める上で大事だと思っています。

「マーケット・イン」とは、その土地の商習慣やビジネスチャンスに対するアイディアや意見を、現地のメンバーから吸い上げること。

そして、日本からあれこれ言われたことをインプットして言われたことをやるのではなく、逆に自分たちのアイディアを本社に発信していくこと。自らのアイディアで結果を作って「アカウンタビリティを果たす」こと。そんなやり方が理想の現地化だと思っています。

 

内藤:本社からマイクロマネジメントをしてしまう傾向があるということでしょうか。

 

久保田:日本企業は、海外の子会社に対して、細かく指示を出して、介入して、報告を求めたくなってしまう。重要なのは逆だと思います。現地のやり方をよく観察して、現地スタッフにオーナーシップと責任の意識を持たせるべきです。

一例ですが、本社と各国子会社の会議には、ローカルメンバーの事業部ヘッドを出席させています。私がローカルスタッフに資料を準備させて報告するのは簡単なのですが、彼らが経営報告の場に出席し、自分の言葉で自分で用意した資料や計画を発表することで、責任感が芽生えます。

彼らの意見を取り入れて、彼らが主体となってビジネスを動かしていくと、彼らもそれに対してやりがいが出てくる。そうやって、自分達で自分たちの事業を自らドライブしていくような感覚を身につける機会やチャンスを与える。それが現地化であり、事業の成長ドライバーになっていくと思っています。

 

 

強いものが勝つのではない、勝ったものが強いのである

内藤:久保田社長が仕事をする上で大切にしている価値観や信念は何でしょうか?座右の銘もありましたら教えてください。

 

久保田:「強いものが勝つのではない、勝ったものが強いのである」ですね。

これは高校のラグビー時代から、ずっと大切にしている自分の信念であり指針です。どれだけ強いチームに対しても、負けるつもりはない、という気持ちで常に自分を鼓舞しています。

強いチームが他にもいるなかで、どういうマインドで相手に立ち向かっていくかが重要です。「相手は強いから、ダメかもしれないな」と思いながら挑んだら、絶対勝てないです。この強い気持ちを、ずっと仕事や商売においても当てはめています。

また逆に、自分が優位な立場にある場合でも安心は禁物という意味合いで、何事にも緊張感をもって取り掛かるように努めています。

鉄の加工メーカーにいた時、北米のT社に新規取引のアタックを仕掛けた時もそうです。もし自分が「ダメかもしれないな」と思いながら挑んだり、他人の「無理に決まってるやろ、やるだけ無駄や」という言葉に引きずられながら挑んでいたら、実現はしていないはずです。

 

そこにある可能性を信じて、可能性が少しでも開く転機や、可能性に繋がるチャンスを探ったり狙いながら戦略的に挑んだ先に、勝利の結果があると信じています。

ビジネスの面白いところは、信じて真正面から突進するだけではだめで、事業や経営の戦略以外にも、人と人とのご縁や、運気なんかも全て味方につけながら最終的に勝って結果を出す、というところだと思います。

 

内藤:この座右の銘を聞いて、前段のキャリアのお話がとてもしっくりきました。厳しい環境で高い目標を背負う状況においても結果を出し続ける裏には、この強い信念がご自身を支えていたのですね。

 

久保田:あと、工場の経営に携わっていた時は、こんな指針を掲げていました。

「3 ion + A」 (スリー・イオン・プラス・エー)

これは何かといいますと「Tension、 Passion、 Action + Amenity」の4つの要素をまとめて表現した標語です。結果を出す上で重要な要素だと思う「緊張感」「情熱」「行動力」の3つに加えて「居心地の良さ」というのもすごく大事にしています。

従業員にとって居心地の良い労働環境を作れるのは、上の人間しかいませんから。

 

 

今でもラグビー一筋38年

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内藤:日々お忙しい中で、気分転換のために楽しまれているご趣味などがあれば教えてください。

久保田:高校で始めたラグビーを、50代になった今でも続けています。海外駐在で国を移動する度に、現地のラグビーチームを探し出して、社会人OBチームに入っていました。

2度に渡る北米駐在時も、ケンタッキー大学のOBチームやシャーロットラグビークラブに入ってプレイしていました。そこでの人脈が結果的にビジネスに繋がったりもしました。

 

荏原製作所へ入社当初にも、ラグビーで肋骨を3本折ってしまい、上の者からしたら「あいつなにやってんねん」と思われてるかと思います(笑)

それでも懲りずに、現在もなおシンガポールでラグビーは続けています。そういえば昔、T社グループに在籍時、同社の社長アテンドで世界一周の出張を自分がアレンジして同行するというミッションがあったのですが、その1週間前に左足を複雑骨折しまして。

行かないという選択肢はない、と決めて、骨折していることを公には隠して(勿論バレていますが)、気合で乗り切ったという事件がありました(笑)

 

少し脱線しましたが、ラグビーを通して、体力的なタフネスも、ビジネスで勝負する強いマインドも鍛えられてきたので、私の人生の根幹にある大事な趣味ですね。もちろん気分転換としても楽しんでやっています。

 

内藤:つねに新しいことにチャレンジを続けてきている力強さはラグビーから来ていらっしゃるんですね。実は知人がシンガポールでラグビーをやっていることもあって、Facebookグループの写真で久保田さんを見かけることもありました(笑)

本日は、とてもダイナミックで、映画のようなお話を伺うことが出来ました。ありがとうございました!


取材日:2023年4月27日
※本記事に記載の内容や登場人物の所属・肩書は、取材日時点での情報になります。

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