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経営者に聞く 「村田製作所シンガポール 泉谷寛マネジング・ディレクター」  トップインタビュー

16 February 2023

 

ASEAN経営者インタビュー 

  村田製作所シンガポール 泉谷寛マネジング・ディレクター

 

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(写真左から) ASEAN専門家 川端隆史氏、村田製作所シンガポール 泉谷寛 マネジング・ディレクター、SPEEDA ASEAN CEO 内藤靖統

 

「経営者に聞く」インタビューシリーズ

 

SPEEDA ASEANでは、ASEAN市場で挑戦している皆様を、経済情報とコミュニティ作りを通してご支援しています。

「経営者に聞く」インタビューシリーズでは、ASEAN地域で事業展開する日系企業の代表者の方々に、ご自身の経営哲学や信念、海外事業経営の醍醐味(挑戦の難しさと面白さ)をお伺いし、ご本人と会社の魅力を読者の方々にお届けする企画です。

今回は、SPEEDA ASEAN CEOの内藤靖統とASEAN専門家の川端隆史氏がお話しを伺ってきました。


村田製作所として、1972 年に初めて海外に設立した工場は、シンガポールにあります。

この50 周年を控える重要なタイミングで、現地のトップして赴任した泉谷寛氏に、東南アジアや南アジアのビジネスの秘訣を聞き、ビジネスパーソンとしての軌跡に迫りました。

シンガポール政府を活用する方法

川端:シンガポールに泉谷さんが社長として赴任したのは、2021年。コロナ禍の最中というタイミングでした。特殊な環境でスタートしましたが、今はポスト・コロナを迎えています。これまでの2年ほど振り返って、シンガポールでのビジネスの面白さと難しさをどのように感じていますか。

 

泉谷:はじめの1年間くらいは、コロナ禍のため外部との付き合いが限られていましたが、様々な規制が緩和されたこの1年間くらいは社外の方との対面でのやり取りや、出張に出ることも徐々に増えて、仕事の楽しみが増えてきました。

一つ、印象的なエピソードを挙げましょう。日本だと、なかなか政府高官や大臣クラスと合うことはありませんが、シンガポールだと国の規模もあって、結構、会う機会があります。「トリパタイト」といって政府と組合と企業が、三位一体となって作戦を練ります。

日本で言えば、「政労使」のイメージです。その席に、大臣クラスや政治家の方が参加されて、直接、議論を交わせる。シンガポールという国は、まるで企業のように、トランスフォーメーションを繰り返して「次はこういう業界を呼び込んでこよう」というスピード感も持って動いています。

私たちも、この動きに上手く乗っていけるかどうかは重要なポイントだと感じています。

 

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川端:政府関係とのやり取りを通じて、これは感心するな、といった具体的な点はありますか。

 

泉谷シンガポール政府は我々以上にストラテジックだと感じます。政府側も達成したい明確な目標と支援メニューを用意しています。

我々が政府にお願いしたいことや求める役割も含めてストラテジックにアプローチすると、「それなら、政府としてはこれもありますよ、できそうですよ」と言って色々と話が広がり、ソリューションを考えてくれます。

一方で、仮に我々が「明確なやりたいこと」をもたずにアプローチしても、うまくいかないでしょうね。

幸い、当社はシンガポールで50年という長い歴史を持っていますので、政府側も認知していただいているということは大きいです。スピード感も持って、もっともっと活用していくべきです。シンガポールでの仕事の面白さの一つでもあると思います。

 

環境を言い訳にせず、チャンスに変える

泉谷:シンガポールはご存じの通り、すでに高所得の国です。そのような国に、当社は工場を2つ持っていて、2000名以上の従業員を抱えています。

工場のうち1つ目は、当社グループのなかで最初に設立した海外工場で、202212月に50周年を迎えました。もう一つは、2017年にソニーさんのバッテリー事業をM&Aした時に引き継いだ工場となります。

 

川端:これだけの規模の拠点をどうのように活用されているのでしょうか。

 

泉谷:製造拠点としては、どうしてもコストが高くなってしまいますし、オペレーターは外国人に頼ることになります。ただ、ビザをはじめ様々のルールがあり簡単に雇用ができる環境ではありません。

はじめは私もこうした「難しさ」と向き合いがちでした。しかし、私は、もうその考え方を捨て去りました。シンガポールという国にいるのだから、良いところをどんどん活用すればいい。そう切り替えたのです。

 工場はスケールアップが1つのステータスとなります。しかし、シンガポールの環境で目指すべきは、スケールアップではない他の役割です。例えば、社員には「世界最高の生産性を達成する」といったチャレンジに取り組み、目指すべきは、スケールではなくクオリティだと伝えます。

また、他のシンガポールの良い面としては、デジタルリテラシーの高い人材やスタートアップ企業が多い。こうしたプラスの環境を使って、「シンガポールらしい価値のある工場」にしてゆくという発想が大切です。

 

川端:シンガポールは確かに、製造業の拠点として低コストには全く向きませんね。ただ、それを嘆いても仕方がありません。

 

泉谷:結局のところ、大切な財産は『人』だと思います。今、東南アジアに工場を作っています。10年前はフィリピンに作りました。タイには長年、工場がありました。今後も増える予定で、今はMLCC(積層セラミックコンデンサ)の工場の立ち上げしています。

こうした工場の立ち上げのプロセスで、先行してノウハウが蓄積しているシンガポールの工場が「お兄さん工場」として、海外工場の立ち上げや運営を支えるハブのような存在としてサポートしていくことができます。

このようにシンガポール拠点には、規模だけではなく仕事のクオリティの部分で貢献していくことも求められていると認識しています。

 

川端:泉谷さんは、ポジティブなところに目を向けて、それをどう活用してやろうか、とお考えになっていると感じました。

 

泉谷:強みを使わないと価値が生まれません。弱みに目を向けても、本当の価値には繋がらないので、強みを生かすしかない、そのように考えています。

 

現地目線で取り組む「3層ポートフォリオ」、新規事業創造の試みの要諦

内藤:交通IoTや自動車、スマートビルディングなどいろいろなところで、貴社のコア製品であるセンサー系の部品が使われています。新たな事業の機会の創出には、どのように取り組んでいるのでしょうか。テーマ選びと組織体制について教えてください。

 

泉谷:ASEANとインドでは、「社会課題解決に繋がるテーマ」に取り組んでいます。最終的には社会貢献価値をいかにお金に変えていけるか、色々と検討しています。

例えば、インドネシアで実施しているトラフィックカウンタは、日本のチームが東南アジア各地の現地法人の方と一緒に取り組んでいます。社会課題解決のために通用するものができると、将来色々なところに広げられる可能性があります。

場合によっては、リバースイノベーションのような形で日本など先進国に持ち込むことも視野に入ります。また、農業×IoTの領域にも注目しています。インド、ベトナム、タイなど農業の盛んな国で、どのような取り組みができるかですね。

 

川端:例えば、アグリテックなどは、貴社の技術やノウハウを生かして期待される産業の一つと言えそうです。

 

泉谷:そうですね。これからインド、その後は、アフリカと来ると思います。当社はハイエンドが得意分野で、むろん、インドやアフリカにもハイエンドを求める富裕層はいるでしょう。スマートフォンやオートモーティブが該当します。

しかし、IoTでは必ずしもそうではありませんそのため、ハイエンドというよりはどうソリューションに繋がっているかという部分が占める割合が大きくなります。

ここの力を磨いていくことが我々の将来の幅を広げることになるのかなとみています。

 

川端:この動きは御社が掲げている、3層ポートフォリオの3層部分でしょうか。御社は、今後も業界を牽引するイノベーターとして価値を生み出していくための経営として、3層構造のアプローチを掲げています。

1層目がコンポーネントの標準品ビジネスで基盤事業として成長を牽引し、2層目がデバイスやモジュールの用途特化型ビジネスとして事業領域の拡大と新たな付加価値を創造する。

そして、今後の非連続な将来のコア能力の構築として3層目で新たなビジネスモデルの構築です。(注:3層ポートフォリオとは)

 

泉谷:まさにそうです。ただ、3層目に向けた挑戦は、基本的な考え方を変えなければ行けません。営業には、お客様のエンジニアに売り込んで我々の商品を採用していただく「プロモーション」のステージと、注文が来て部品を納める「刈り取り」のステージと、2種類があります。

東南アジアは圧倒的に後者の刈り取りが多く、前者のプロモーションは少ないのです。そのため、もともとシンガポールにいるメンバーは、お客様にプロモーションする活動に慣れていないことが多いのです。

そのため、3層目のビジネスを立ち上げには、全く異なる発想が必要となります。この新たな領域への挑戦に取り組めるできるメンバーをアサインして、少しずつでも前に進んでいけるよう取り組んでいます。

 

230508_top_interview_murata-1.png (158 KB)出所:村田製作所ウェブサイト「ムラタの経営戦略」Vision2030(長期構想) 「成長戦略① 基盤事業の深化とビジネスモデルの進化」より

https://corporate.murata.com/ja-jp/company/business-strategy/vision2030/growthstrategy1

 

230508_top_interview_murata-2.png (278 KB)https://corporate.murata.com/ja-jp/company/business-strategy/vision2030/growthstrategy1/layer3

 

 

川端 3層目を実現するための、新しい事業のアイデアについてはシンガポールの現地サイドから提案して本社と相談して進めていくイメージでしょうか?

 

泉谷:それもありますし、日本のチームで進めているものもあります。規模感は日本のチームの方が圧倒的に多いです。

しかし、ローカルでしか思いつかない視点がありますので、シンガポールでは新たにニュービジネスクリエーションチームを作って活動しています。日本人は1人いますが、他はシンガポール人をはじめとする多国籍チームです。日本側との壁打ちもしています。

 

内藤:現地雇用のナショナル・スタッフの皆さんに期待する部分は大きいと思います。具体的にはどのような点を期待していますか?

 

泉谷:例えば、インドの農家の実態について我々はよく理解していません。ナショナル・スタッフは、そのようなところにもしっかりと目が向いていて、見えている範囲が全然違います。

あとは、新型コロナウイルスのデルタ株が広まったときは、他社も含めて日本人駐在員は帰国してしまいました。こうしたとき、日本人が中心で新規ビジネスをやっていたのでは、一瞬で仕事が止まってしまうため、ナショナル・スタッフの存在は重要です。

他には、人脈の広がりも大切な要素です。三層部分を当社だけでやりきるというのは、ほぼ無理で、様々な企業や人々と複雑に連携しなくては実現できません。

そのため、ナショナル・スタッフの活躍には物凄く期待しています。先ほど申し上げたようにシンガポールは刈り取り型の営業が多いため、売上げとしてはアセアンの重要度は上がっていますが、プラスアルファのプレゼンスが必要です。

そのためには、ローカル発信の事業が生まれて来るとインパクトが大きいと言えます。今後、面白い発表ができるようになれればいいなと思っています。

 

真の現地化に求められるもの

川端:ここまでの議論は、日系企業の組織の現地化という課題にも関わりがありそうです。『現地化』の在り方についてはいかがでしょうか。

 

泉谷:ナショナル・スタッフで昇進していく人は、日本人マネージャーの指示を的確に理解して、忠実に実行していくという方が多かったと思います。しかし、今では求めるものが変わってきました。

それは、何が必要かということを考えて自分で行動・判断して決断していくという人材なのです。こうした人材を増やすためには、情報共有をたくさんすることが大切です。

例えば、「指示」ばかりではなく、情報を「共有」して考えてもらうことがあるでしょう。「共有」を通じて経営層や事業部単位での方針をきちんと理解してもらい、自分たちが今何をしなくてはいけないかを考えたり、クライアントや社会に発信したりすることに力を入れています。

 

川端:ナショナル・スタッフの方々が自ら動けるような形で、情報のギャップをなくすというのは非常に重要な部分ですね。

 

泉谷:当社社長の中島もよく言う「自律分散経営」を実践するためには、ナショナル・スタッフも全体最適で考えられなければいけません。

そのためには、情報が非常に重要です。情報を私たちから与えるだけでなく、自ら情報を獲得したり、横のつながりでの情報交換をしたりする機会を提供する仕組みを整えることも大切です。

ちょうど、コロナ明けという時期に入りましたので、このような機会はどんどん増やしていきたいですね。限られた予算のなかでも、ナショナル・スタッフがビジネストリップをできるようにしています。

 

また、「現地化」といった時に、単純にマネジメント層にナショナル・スタッフが多ければ良いとは思いません。鍵となるのは、全体を知るということとなのです。そのためには、自分たちがどのぐらいのレベルにいるのか、を知る必要があるます。

他社や他工場や他拠点と交流をすることで、比較でき、自分たちのレベル感を理解し、参考にしてさらに研鑽に励むことが出来ます。

ずっとここだけをみている、だけでは「当たり前」になってしまいますので、刺激を受けてさらに改善しよう、上げていこうという人材が増やしていくことがとても重要なことになります。

オートノミー(自律性)に加えて、全体を知ることと、自分たちがどれくらいのレベルにあるのかっていうのを知るという3つの要素が全て整うことで、真の「自律分散」を実現できると思っています。こうしたことを実現していくことが、ゆくゆくは現地化に繋がる、そういう風に思っています。

 

川端: こうした仕組み作りは、本社から派遣されている日本人の方の非常に重要な役割の一つと言えますね。

 

泉谷:そうですね。私が、ある他拠点のナショナル・スタッフ幹部に「どうして君の考え方はそんなに変わったの」と聞いたら、他拠点に行った時の経験をこんな風に教えてくれました。

「実は、X拠点に行って衝撃を受けたのです。自分たちの拠点よりも賃金水準が低い国なのに、色々な工夫をしていて水準がとても高いことを目の当たりにしました。これは、自分たちは負けられない!もっともっとレベルの高いことをしなければいけないと感じた」、と。

これは、1人だけでなく、異口同音で聞いている話です。そして、考えが変われば、行動が変わってくる。

 

川端:とてもユニークな議論だと思います。技術論や商品の質が大切なことはもちろんですが、どう振る舞うかによって圧倒的な違いが出てくることになりますね。

リモートワークが普及しましたが、それでもやはり、現地に行かないとわからないことがあることを示す良い事例だと思います。一、二週間滞在し、現地の拠点の人たちと一緒に仕事をして、日々議論をしていると、なるほど、という話が色々と出てくることが想像できます。

 

インド市場のポテンシャル

川端:ご担当の地域では、インドでの業績が徐々に伸びています。インドも含め、特に重点分野や重点国はどこにあるのでしょうか。

 

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泉谷:昨今の情勢を受けて、様々なお客様の工場が中国からシフトしています。そのシフト先としての一つはベトナムで、もう一つがインドです。これがビジネスでの伸び分に当たります。

ベトナムのハノイの周辺にもたくさんの中国企業や韓国・台湾企業がありますし、インドもAppleなど色々な会社がサプライチェーンを持ってきています。

今後は、インドの地場のTataMahindraといったメーカーがどんどん展開をするでしょう。彼らはEVを作っていますので、当社としても大きなビジネスチャンスがあると感じています。

 

加えて、当社の売上げで割合の大きいコミュニケーション関連のデバイスでは、インドでは5Gのベースステーションが増えていきます。

今後は、インド地場企業も手がけていくでしょうから、我々に対するニーズも増えていきます。インドは一番注目している市場ですし、間違いなくこれから伸びますので、リソースの充当は大きく考えています。

 

川端:貴社をグローバルで見ると、中国の売上は当然大きいというなかで、今後、インド、東南アジア、アフリカといった地域も伸びると、ポートフォリオのバランスが非常に良くなります。

昨今、地政学リスクが高まるなかで、万が一、有事やなど大きな動きで、ある市場が打撃を受けても、他の大きな市場がある、多様な市場を抑えているという状況ができていると、しなやかに強い組織になりますね。

 

泉谷:お客様には、地政学的な理由でサプライチェーン複線化の動きがみられています。一方で、中国のサプライチェーンも大きく大切です。我々としては、しっかり両方に入っていくということが大切です。

そして、これから、各地の現地企業が我々のお客様として大きくなると思いますので、このチャンスはしっかりと獲得していきたいです。

 

今後、注目しておきたいグローバルトレンド

川端:これまでのお話で地政学といった大きな話題が出てきました。最近はChat GPTが大きな話題となっています。今、泉谷さんが現在注目されているグローバルトレンドとは何でしょうか。

 

泉谷:もちろん地政学やAIなどは、私自身とても興味を持っています。会社としても、こうした変化に適用、対応していかないことには生き延びられません

地政学については、今後、インドやアフリカがプレゼンスを上げてくること考えると、その流れの20年先を考えて、たとえば、今私のいるASEANはどうしていくべきかといったことを、今のうちに模索しておかなければなりません。

環境対策でも再生可能エネルギー化の流れは、どんどん前倒しで進んでいます。

 

AIの進化については、スタッフの皆さんに「2025年まで何%位の人にリスキリングが必要か」という質問しました。50%位の人にリスキリングが必要で、これだけの仕事がなくなり、それ以上の仕事が生まれる、という記事を見せました。

「リスキリングしても変化を楽しもう!」という感じで伝えたのですが、AIなどが来ることで変化を余儀なくされることも確かで、企業としてふるいにかかります。これは、もうすぐそこに来ています。危機感を強く持っていて、急がないといけません。

 

技術的面やテクノロジーの観点では、ミリ波が本格的に普及するかには関心を持っています。私自身が以前、ミリ波の製品を手がけていました。

今、5G は大方使えるようになってきましたが、ミリ波の普及はまだまだこれからで、スマホなどで感じられる動画をダウンロードするなどのレベルでは4Gと大きな差がありません。

普及すればレイテンシーレートが大きく変わりやれることも増えてきます。ミリ波の世界が広がれば、次の世代6Gなどにも繋がります。我々も当然、この動きを加速化するための商品を作ったり、お客様にアプローチしたりしています。ここは、通信という観点で大きなブレイクスルーとなります。

ミリ波は遠くに飛ばないものですし、6Gはもっと飛びません。そうしたなかで、どのようにネットワークを構築していくかといった、様々な周辺にあるエッジサーバーやエッジコンピューティングはどんどん変わるでしょう。この技術の変化にはすごく注目しています。

 

「外向き」のタイムマネジメント、テニスで広がる人脈

川端:日々、ご多忙を極めていらっしゃるかと思います。タイムマネジメントで大切にしていることはありますか。

 

泉谷:タイムマネジメントという意味で言うと、自分の時間を自分の領域以外に使えるかというのが、すごく大事だなと思っています。

 例えば、上司が自分の領域ばかりをやると、その下の人たちはさらに細かいところにいってしまって、みんなが内向きになっていきます。

上の人が半分の時間を自分の組織外の仕事に時間を使うと、当然下の人たちも、私と同じマネジメントのレイヤーに立って考える時間も増えるはずですし、外を見ようとするはずです。そうやって全体がなっていくといいと思います。これは、まだ自分でも自問自答を繰り返しながらやっています。

 

上司としては、部下を育てるために自分が大きくならなければ部下に迷惑が掛かるなと思います。そう思うと、頑張ろうという気が沸いてきます。でも、ふと予定表を見ると「また中の仕事ばかりだな」と思うこともあります。

定期的に見返して、できるだけ外の仕事を増やそうとしています。最近は、コロナによる規制もほぼなくなりましたから、外の人とも色々と繋がりが出てきました。そこに、ナショナルスタッフを巻き込むことも含めて、できるだけ積極的にやろうとしています。

 

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プライベートではテニスに時間を使っています。ゴルフもやるのですが、一番好きなのはテニスです。コロナの最中でも2名ならプレー出来ましたし。シンガポールでは日本人のサークルがあるので、毎週参加しています。

会社の方以外と気楽に交流する機会にもなり、新しい出会いやコネクションが出来たりします。

高校からずっとやっているので、アメリカに行った時もやっていましたし、テニス仲間はずっと繋がっています。アメリカの時に知り合った人の知り合いの人が日本に行って、またその人にシンガポールの知り合いを教えてもらう、と繋がっていく。すごく面白いなと思いますね。

年齢を重ねてもできるスポーツというのも長所だと思います。

 

修羅場をやりきってビジネスパーソンとして成長

内藤:これまでのお話で、泉谷さんがとてもオープンな姿勢で、変化への対応を積極的にされる方だと感じました。

マネジメントとしてこれまでのご経験の中でどのように変化を自分の力に変え、オープンに周りのメンバーとのコミュニケーションを取りながら、どのようにマネジメントスタイルを作られてきたのか興味があります。

 

泉谷:ラッキー(?)なことに、私は色々な修羅場にアサインされました。すごく大変でしたが、とても感謝しています。

直近で言うと、5年前ぐらいに大変な修羅場を味わい、一番の転機でしたね。ポジティブとか明るくとか、一方で情熱的でというのは、まさにその時に思ったことです。急に全く違う部門に「問題を解決してきて」という感じでアサインされました。

何も知らないところにリーダーとして行くときは、マイクロマネジメントではできないですし、しようとも思いません。指示を出すにしても、みんなに情報を共有して今自分たちはこういう状態です、ということは頻繁にやっていました。

工場では目先のところにみんなフォーカスしがちなのですが、やはり事業全体の話を工場にも持って行って、常にポジティブに「絶対に巻き返しできるよ」という雰囲気を普段の中だしていように心がけていました。

ポジションが上がってくると、細かくマネジメントするなんていうのは、もうできないなと分かった時は一つの転機でした。 

 

「絶対に逃げない」という誓いが信頼を作り出す

川端:そうした修羅場を切り抜け、アメリカやシンガポールと海外勤務の経験もある中で、今までを振り返って個人として重要にしている価値観とは何でしょうか。

 

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泉谷:元々は日本で営業や事業部などを経験し、今、ここ、シンガポールに来ているのですが、お客様も、社内も人と人の信頼関係が全てだと思います。これがすごく大事だと思っているので、とにかく信頼関係をどう築けるかというのが、僕の中では一番大きいですね。

自分はどういうところが特徴なのかと問われた時に、たくさんの修羅場を任されましたが、「絶対に逃げない」というのだけは誓っています。そうでないと信頼関係は絶対に生まれないと思います。これはお客様との関係でも変わりありません。

お客様から見て「逃げる人」というのは、交渉相手にはならないです。何が起きても絶対に自分のボールは自分で持ち続ける事を大切にしています。あまり格好良いことは言える人間では無いですが、情熱的で、ポジティブに明るく、リーダーシップを発揮する。

それが私のスタイルです。これは、責任感と表現するより、使命感だろうなと感じています。

 

内藤: どこか「やらされている感じ」のある責任感という言葉よりも、「自分がやらなきゃいけない」と思う使命感という表現の方がしっくりくる、という感じですね。最後に座右の銘、またはお好きな言葉について伺います。

 

泉谷:座右の銘。どなたかがインタビューに応じているのをみていて、「この質問が来たら自分は全く答えられないな」と思っていました。座右の銘リストはありませんか(笑)。

次回までの宿題、と言いたいところですが、今日話したことは、僕が本当に、常に、大事にしていることです。それを組み合わせて座右の銘と理解して頂けたら良いと思います。

 

川端・内藤:本日は貴重なお話をお聞かせいただき、大変ありがとうございました。

 

取材日:2023年3月21日
※インタビュー記事に記載の内容や、登場人物の所属・肩書は、インタビュー時点での情報です。

 

 

 

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