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マレーシア市場トレンド2025Q1|経済成長持続もFDI急減、規制・産業動向に注目

サマリー
マレーシア市場2025年第1四半期の最新動向を解説。経済成長持続もFDI急減、ASEAN議長国としての外交、産業高度化や規制強化など注目ポイントを紹介します。
2025年第1四半期のマレーシア経済は、前年同期比4.4%の成長を維持し、内需の底堅さが際立ちました。一方で外国直接投資は大幅に減少し、米国の新関税など外部環境の逆風が鮮明になっています。
政治面ではASEAN議長国として「包摂性と持続可能性」(Inclusivity and Sustainability)を掲げ、中国や日本との協力強化が進展しました。加えて、半導体産業の高度化や外資によるデータセンター投資、パーム油やCCUS関連の制度整備など、産業・環境分野でも変化が加速した四半期となりました。
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このように市場や経済指標は単体で変動するのではなく、政治、規制、社会変化、技術革新、環境政策など、さまざまなマクロ要因が相互に影響し合って動いています。日系企業が現地での投資判断や事業戦略を適切に立てるには、これらの要素を包括的かつ体系的に把握することが不可欠です。
スピーダでは、ASEAN各国のマクロ環境を把握できるカントリーレポートを四半期ごとに発行しています。本レポートは、政治(Political)、経済(Economic)、社会(Social)、技術(Technological)、法律(Legal)、環境(Environmental)の6要素で構成されるPESTLEフレームワークに基づき、外部環境の変化やリスク、事業機会を体系的に整理。東南アジアへの進出を目指す日系企業が注目する業界や地域に焦点を当て、ASEAN5か国とインドを対象に統一フォーマットで作成しているため、国別の比較や定期的なモニタリングにも適しています。
本記事では、1Q2025のマレーシア市場のマクロ環境について、スピーダが発行するカントリーレポートの内容をもとに、要点をまとめてご紹介します。
経済 (Economic) – マレーシア経済、1Q25は4.4%成長も投資環境に逆風
第1四半期のマレーシア経済は前年同期比 4.4%成長 と、政府目標を達成しました。内需の底堅さが景気を支える一方で、外国直接投資(FDI)の減少や輸出リスクが浮き彫りとなった四半期でした。

内需が成長を下支え
最低賃金の引き上げや旧正月需要を背景に消費が伸び、建設投資や公共支出も拡大しました。国内需要の強さが全体の成長を支え、経済の安定性を示しました。
外資投資の急減と輸出産業の不透明感
一方で、外国直接投資(FDI)は前期の 102億ドルから10億ドルへ大幅に減少。米国の新関税措置による影響も意識されています。特にマレーシアの主要輸出産業である電気・電子(E&E)やパーム油は外部環境の逆風を受けやすく、半導体や太陽光パネルといった分野の先行きにも不透明感が広がっています。
産業別の動向
小売・物流・ICTを含むサービス業や、自動車・電子関連の製造業が堅調に推移しました。建設業も住宅やインフラ需要に支えられて高い伸びを示し、経済の下支え役となっています。
政治 (Political) – マレーシア、ASEAN議長国就任で地域統合を主導
2025年第1四半期、マレーシアは「包摂性と持続可能性」(Inclusivity and Sustainability) をテーマにASEAN議長国を務めました。デジタル経済や経済統合を推進する姿勢を示すと同時に、中国と日本からの高官訪問が相次ぎ、戦略的関係の強化が鮮明となった四半期でした。
ASEAN議長国としての役割強化
アンワル首相は「第二のルネサンス」を掲げ、積極的な外交活動を展開。ASEAN+の主要国に加え、BRICS+など新興グループとの関与も強めています。議長国としての重点課題のひとつは、ASEANデジタル経済フレームワーク協定(DEFA)の採択であり、貿易成長の加速や中小企業のエンパワーメントが期待されています。
中国との関係深化
4月には習近平国家主席がマレーシアを訪問。旅行・物流・デジタル経済を含む31件の協力覚書が締結され、相互査証免除制度も5年間延長されました。さらに「2+2外交・国防対話メカニズム」の設立が提案され、両国関係はより包括的な枠組みに発展しつつあります。
日本との協力拡大
続いて5月には岸田文雄前首相が特使として訪問し、脱炭素、エネルギー転換、レアアース供給での連携を確認。サラワク・マレー間送電網の維持協力も議題に上がりました。また、日本が主導する地域の脱炭素枠組み「AZEC」への参加も促され、環境・エネルギー分野での関係深化が進展しました。
社会 (Social) – 労働市場の底堅さと消費者トレンド
労働市場の回復と人材シフト
2025年第1四半期、就業者数は増加を続け、労働参加率も改善しました。特に高スキル・テクノロジー関連の職種へのシフトが鮮明で、今後10年でAIが製造業やサービス業の3割以上の雇用に影響を与えるとの予測も出ています。しかし、AI、サイバーセキュリティ、クラウド、データエンジニアリング分野では人材不足が深刻で、企業はリスキリングを急ぐ必要があります。
消費者トレンドの変化
FMCG市場は5%成長を記録。消費者は買い物回数を減らす一方で、一度の購入額を増やす傾向にあります。地場ブランド志向が高まり、文化的アイデンティティや国内経済への支持が背景にあります。さらに、サステナブルな包装や地域コミュニティ活動など、環境配慮型の取り組みを打ち出すブランドが支持を集めています。健康・ウェルネス志向も拡大し、オーガニック食品やフィットネスサービス、メンタルケアアプリへの需要が増加しました。
技術 (Technological) – 産業高度化とデジタル投資の加速
半導体産業の構造転換
米国の輸出規制を受けつつも、マレーシアは英国Armとの提携を通じ、半導体産業を後工程主体から設計・知財領域へとシフトさせる国家戦略を進めています。これは付加価値の向上と雇用創出につながる動きであり、今後の成長産業の中核を担うと期待されています。
外資によるデジタル投資
米マイクロソフトは22億ドル規模を投じ、国内3カ所にデータセンターを建設する計画を発表しました。AI・クラウド基盤の整備が進むことで、約3.7万人の雇用創出が見込まれています。これにより、デジタル経済の成長に不可欠なインフラ強化が加速しています。
環境 (Environmental) – 国際基準への対応強化
2025年第1四半期は、持続可能なパーム油認証制度「MSPO2.0」が施行され、森林破壊防止や排出削減が義務化されました。これによりEU市場へのアクセス維持が図られます。さらに3月にはCO₂回収・貯留を規定するCCUS法案が成立。2050年カーボンニュートラル達成に向けた法的基盤が整備され、外資の参入を後押しする環境も整いました。
法制度 (Legal) – データ保護・税制改革・禁煙区域の拡大
2025年第1四半期は、国際基準を意識した法制度の改正が相次ぎました。1月1日より 個人データ保護法の改正が施行され、データ保護責任者の任命や侵害報告の義務化が始まりました。ソーシャルメディアやメッセージング事業者には新たにライセンス取得が義務付けられ、デジタル分野での規制強化が鮮明となっています。
同じく 1月1日より たばこ規制法が施行され、ランドリー施設や職場建物が禁煙区域に指定されました。さらに、物品・サービス税(SST)の課税範囲拡大、OECDが主導するグローバル最低税率(15%)の導入、高額配当に対する新課税など税制改革も進み、財政基盤の安定と国際協調への姿勢が鮮明となりました。
今後の展望|内需の強さと外部リスクのせめぎ合い
今後も安定した内需を背景に成長は続くと見込まれますが、米国の関税措置や世界的な景気減速懸念が輸出産業に影響を与える可能性があります。ASEAN議長国としてのリーダーシップや、デジタル化・環境規制対応の進展が、地域ハブとしての地位を高められるかどうかの鍵となります。
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本記事は、スピーダ東南アジアが四半期ごとに提供しているPESTLE分析をもとに作成したカントリーレポート(英語版)から主要トピックを抜粋したダイジェスト版です。
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