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東南アジア市場動向と注目ポイント 2025年第二四半期レポートより

2025年第二四半期 各国の動向と注目産業を解説
2025年第二四半期、東南アジア地域は世界経済の不透明感や地政学的な緊張に直面しながらも、内需拡大やインフラ整備、産業構造の転換、貿易の多角化を背景に成長を維持しようと努めました。一方で、米国の関税政策や世界的な貿易摩擦は引き続き主要な不確実性要因となり、とくに輸出志向型セクターに影響を及ぼしました。
本記事では、成長の早い東南アジア地域にスポットを当て、東南アジア版Speedaで四半期に一度作成しているカントリーレポート(東南アジア各国の経済マクロレポート)をもとに、東南アジア各国の経済指標や注目産業の動きを整理し、東南アジア市場に関心をお持ちの皆さまの今後のビジネス戦略に役立つ情報をご紹介します。
成長をリードした東南アジア主要4か国
東南アジア全体で見ると、ベトナムは第二四半期に主要国の中で最も顕著な高成長を遂げました。これに続き、目標を上回る成長を示したインドネシア、国内消費に支えられたマレーシア、そして輸出の先行出荷が寄与したシンガポールが、いずれも堅調な拡大を見せました。ここでは、第二四半期に注目された4か国の経済動向を振り返ります。
| ベトナム:成長を続ける経済と今後の課題
➤ 製造業・インフラ投資の拡大と輸出依存リスク
第二四半期のベトナム経済は、製造業の拡大と政府主導の大規模インフラ投資が成長を下支えました。固定資本形成や消費も堅調に維持し、鉄道や都市交通の整備が関連産業の需要を押し上げました。物価も安定を維持し、ASEAN域内を中心に海外投資も引き続き流入が続くなど、投資環境の強さが示されました。
一方で、輸出依存度の高さから、今後は米国の関税政策による影響が懸念されています。
| インドネシア:目標を上回った経済成長、進む貿易多角化
➤ 製造業輸出の成長と進む貿易多角化戦略
第二四半期のインドネシア経済は、政府目標を上回る成長を達成し、製造業や農業の拡大に加え、公共投資が内需を支えました。輸出も活発化しましたが、世界的な不透明感がリスク要因となりました。その中で貿易の多角化やクリーンエネルギー計画が進展し、外部環境に左右されにくい経済基盤を強化する動きが見られました。
| シンガポール:製造業と金融業が牽引し、経済成長は安定
➤ 経済成長持続と外部リスクのはざま
第二四半期のシンガポール経済は、輸出の回復と金融サービスの堅調さに支えられ、安定した成長を示しました。政府はこうした動きを受け、通年の成長見通しを引き上げました。一方で、世界貿易の先行きや、米国の政策を巡る不透明感は依然として残っています。その状況下で、近隣諸国とのグリーンエネルギー協力や投資拡大を進めることでリスクを補い、成長を下支えしています。
| マレーシア:政府目標通りの成長と潜在的リスク
➤ 内需の底堅さと輸出産業への懸念
第二四半期マレーシア経済は、民間消費や建設投資が主要な支えとしながら、政府が目標とした成長を維持しました。サービス業やデジタル分野市場の拡大も見えましたが、国内市場の底型さが成長を下支えする形となりました。
一方で、貿易黒字の縮小や米国との摩擦が輸出産業に影響を及ぼす懸念が残っています。その中でも半導体や先端製造業への投資規模拡大は続いており、特に高度な設計・開発拠点としてペナンがその役割を強めています。
東南アジアで成長が期待される注目業界5選
次に、東南アジアにおいて成長が期待され、第二四半期に特に注目を集めた産業をいくつか取り上げます。
1.デジタル経済・テクノロジー産業 AIとクラウドが牽引する新たな成長軸
| ベトナム・インドネシア・マレーシアで進むデジタル化とAIインフラ投資
東南アジア各国は、デジタル経済を成長戦略の柱に据え、AI、クラウドコンピューティング、データセンター、サイバーセキュリティ、半導体分野で積極的な取り組みを進めています。
ベトナムでは、大手通信企業やグローバル企業によるAI研究開発センターやデータセンターへの投資が進み、AIフレームワークやフィンテック規制サンドボックスが導入されました。インドネシアは、初の国家AIロードマップを策定し、世界的テクノロジー企業によるクラウドリージョン開設を通じて、地域のデジタルハブを目指すことがアナウンスされました。
また、マレーシアは「マレーシア・デジタル」戦略の下、データセンターやAI分野への投資を拡大し、高度なチップ設計拠点として、ペナンが存在感を高めています。
| シンガポール・タイに見る先進的デジタル産業の取り組み
シンガポールは、AIヘルスケア技術の活用を加速させ、政府系ファンドがグローバル企業と連携してAIインフラへの投資を強化しました。タイでは、外国直接投資の中でデジタル分野が最大の割合を占め、大手企業によるAIや自動化の技術導入が進みました。政府によるサイバーセキュリティ法の強化やクラウドファースト方針の打ち出しなど、制度面でもデジタル産業の成長が後押しされています。
2.インフラ・建設業 政府主導の大型プロジェクトが成長を牽引
| ベトナム・インドネシア・マレーシアで進む大規模プロジェクトと投資拡大
2025年の第二四半期を振り返ると、ASEAN諸国では政府主導のインフラプロジェクトが建設業の成長を力強く牽引しました。ベトナムでは南北高速鉄道や大都市の地下鉄路線建設が進み、建設やエンジニアリング、資材等関連産業の需要を押し上げました。インドネシアでは、海外直接投資の主要分野としてインフラ産業が位置づけられ、地域経済の発展に寄与しました。マレーシアでもデータセンターやインフラ関連投資が建設業を支え、安定した成長を示しています。
| シンガポール・タイの公共インフラ投資の拡大と波及効果
シンガポールでは公共交通設備や機械・設備への投資が増加し、建設・工事分野が活発化な動きを見せました。タイでは大量輸送、高速道路、鉄道、空港など公共インフラ支出が進み、建設業の成長を後押ししました。これらの動きは各国の経済成長を支えるだけでなく、エンジニアリングや建設資材といった関連産業にも波及効果をもたらしました。
3.グリーン経済・再生可能エネルギー・EVサプライチェーン
| 各国で進む制度整備と投資拡大による持続可能な成長
多くのASEAN諸国は排出量削減目標を掲げ、再生可能エネルギーやEV関連産業への取り組みを強化しました。ベトナムでは、排出量取引制度やグリーン投資基準の導入を通じて循環型経済への移行が進められました。インドネシアは、クリーンエネルギー計画を発表し、再生可能エネルギーとEVサプライチェーンへの投資を拡大しました。マレーシアは、再生可能エネルギーロードマップを基に太陽光や水力の拡大を進め、グリーン金融を通じて中小企業の取り組みを支援しました。シンガポールでは、英国やインドネシアとの協定を通じてクリーンエネルギー移行を加速させ、投資家の信頼を高めました。また、タイでは政府のインセンティブがEV部品の現地生産を促し、産業基盤の拡充につながりました。
4.製造業 高付加価値化と輸出志向が成長を牽引
| 各国で広がる産業分野の強みと成長の方向性
東南アジアの2025年の第二四半期を振り返ると、製造業が経済成長の主要な原動力となりました。ベトナムでは、加工工業製品の輸出が拡大し、フットウェアやエレクトロニクス、繊維、機械など幅広い分野で需要が回復しました。インドネシアでは、加工金属や機械、パーム油の輸出に加え、食品や医薬品、自動車製品の国内需要が製造業の堅調な伸びを支えました。マレーシアでは、半導体や電気・電子分野の拡大が製造業全体の成長を押し上げ、シンガポールでは、機械や輸送機器の再輸出と国内輸出が牽引しました。タイは、自動車や食品関連の輸出産業が好調で、EVやエレクトロニクス分野における国産化推進も進展していきました。
5.サービス業・観光業 観光の回復と金融サービスが成長を支える
| 観光需要の復活と多様なサービス産業の拡大
2025年第二四半期、東南アジアの多くの国で観光業の回復が進み、宿泊、飲食、小売といったサービス産業が経済成長を牽引しました。ベトナムでは、旅行需要の増加がホスピタリティ分野を押し上げ、観光収益が拡大しました。インドネシアでは、観光客数の回復により宿泊や飲食業が活性化し、国内移動の増加もサービス業全体を後押ししました。マレーシアでは、デジタルシステムの導入や物流、観光業の拡大がサービス分野を支え、タイでは、観光業の回復が卸売・小売業の伸びに直結しました。また、シンガポールでは観光関連分野に加え、金融・保険業が堅調に推移し、海外直接投資においても同分野が重要な役割を果たしました。
今回取り上げたどの業界も、各国政府の政策的支援や国内外からの投資、さらに地域全体で進む経済統合と技術革新によって後押しされており、今後もASEANにおける注目分野として引き続き成長していくことが期待されています。
東南アジア市場を継続的に理解するために
東南アジア市場は、2025年第二四半期も世界的な課題に直面しながらも、内需拡大や多様な産業の成長によって堅調な勢いを維持しました。多様な変化の激しい東南アジア市場を深く理解し、ビジネスチャンスを捉えるためには、マクロの視点から最新の経済動向を継続的に把握することが不可欠です。
Speedaのマクロカントリーレポートは、PESTLE分析に基づき国別に作成しており、以下のような活用が可能です。
- 最新の経済情報を継続的に把握できる
- マクロの観点から地域を理解し、市場分析に役立てられる
- 各国を縦軸・横軸で比較し、注目分野を定点観測できる
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