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経営者インタビュー

経営者に聞く「荏原製作所シンガポール久保田博通社長」 トップインタビュー

通算合計49カ国のプロジェクトに携わり、最大1年で世界を7周する

久保田:T社グループには2011年6月に入社しています。当時、T社グループの一部門では、海外での事業展開を独自で行うという、事業スキームの転換を試みている最中でした。思い切った改革をということで、海外事業経験の豊富な人材を外部から登用するということで、私が採用されました。

実際はT社グループのK社に参画します。同社は中型の変圧器、電気炉、ブロア、モーター等の製造販売がメインの会社です。

一例ですが、鉄を溶かす大型の溶鉱炉でアーク炉という設備があるのですが、同社のアーク炉用変圧器は、炉内で鉄スクラップと電極の間にアーク放電を発生させ、その熱で鉄スクラップを溶かすために使われます。

この特殊変圧器が、南アフリカのリチャード・ベイ・ミネラルズ(RBM)に納品されていました。RBMは世界有数の鉱物生産企業で、原材料の生産で1ライン800メートルはあるコンベアラインが12本あり、それぞれのラインの上流に同社のアーク炉用変圧器が備えつけられていました。超巨大な設備で圧巻でした。

このような僻地でのサービス体制構築や、現地拡販スキームの構築など事業開発を北中米、欧州、中東、アフリカ、アジアなどで展開し、勤務中の8年間に合計49ヵ国・地域へ訪問しました。

各製品事業に携わる技術者と連携して進めるのですが、私は1年間に最大158回飛行機に搭乗した記録が残っていて、基本的には各都市に1日〜2日しか滞在していません。

私が各都市を移動していくタイミングに合わせて、該当事業の技術者などの関係者が日本から飛んで現地入りする。

世界一周チケットを利用して、各都市を周回しながら効率的に複数のプロジェクトを同時並行で進めていきました。同じ拠点に2~3カ月に1度は訪問して、商談を進めたり進捗や課題を確認したりするんです。

2015年と2017年は、1年間で世界を7周し、スターアライアンスの登場飛行距離で「世界でTOP1000」に二度選ばれました。

内藤:そんな表彰制度があるのですね(笑)。まさに世界中を飛び回り、既存事業の改革や新しい事業を作っていらっしゃったということですね。

久保田:こちらの会社でも海外事業部の責任者としてとても良い待遇で仕事をさせてもらっており、良い仲間にも恵まれて楽しく働けておりました。ただ、その後公となった会社本体での不祥事他により、事業縮小の方向へと大きく舵が切られ、とても複雑な気持ちになりました。

また50代にさしかかるなかで次の10年で新しいチャレンジをした方がいいと思い、再度の転職に踏み切りました。

内藤:久保田さんは、つねに新しいチャレンジを探されていらっしゃいますね。しかもしっかり行動に移していらっしゃる。そこで、荏原さんにご入社されるわけですね。 

改革立ち上げ屋の役割を担いシンガポールへ

久保田:はい、2019年4月に現在の荏原製作所に入社しました。ちょうど日本本社では様々な改革を実行する中で、海外ポンプ事業の成長スピードを上げるというテーマがありました。

アメリカでは「先5年間で売上を数倍にする」というミッションを与えられましたが、自助努力では無理があると感じていました。最終的には、北米で買収という手段が講じられて目標達成への一定の目途が立ちました。
その買収では実質4~5ヶ月程度でディールがクローズしましたから、本社も意思決定は早かったです。

内藤:そのスピード感はすごいですね。そして今年に入ってシンガポールに赴任された、と。冒頭、シンガポール拠点では、シンガポール市場に加えてスリランカとバングラデシュを管轄していると伺いましたが、どのような事業機会があるのでしょうか。

久保田:スリランカは今、金融危機の状況にありますので、どの企業も様子見をしている状況かと思います。逆に、皆そのような状況だからこそ、チャンスがあると思っており、資金回収のリスクヘッジも含めて仕込みをかけているところです。

内藤:バングラデシュはどのような商機が?

久保田:バングラデシュは面白いですよ。北海道2つ分くらいの国土に1.7億人が住んでいる人口過密な国で、伸びしろが大きくてビジネスチャンスが豊富です。

2022年は日本とバングラデシュの国交樹立50周年で、それに関連して両政府共同出資の経済特区(BSEZ:Bangladesh SEZ。https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2021/cd072b90aa735644.html)が新設されました。

この第一期開発地域の販売が始まり、これから建設・設備が始まって、工業用・産業用ポンプの需要も発生しますから、我々もここに入り込んでいきたいなと狙っているところです。

ただ、同国は、政治経済のクリーンさを表すランキングでは、180ヵ国中147番目らしいです(SPEEDA注記:世界腐敗指数ランキング/https://www.globalnote.jp/post-3913.html)。

なので苦戦が予想されますが、政府系・財閥系・大手企業の商流に入り込む戦略を立てています。ダッカの商工会議所の現地企業ともコネクションを作っているところです。

やはり現地の言葉で腹を割った会話ができるかどうかも、ネットワークに入って行く上で重要になってくるので、現地のメンバーを1人採用予定です。

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