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経営者インタビュー

経営者に聞く「日本工営ビジネスパートナーズ株式会社 シンガポール事務所 鵜澤邦泰所長」トップインタビュー

 現地化に求められるグローバルマインド

武藤:経営の現地化についての取り組みを教えてください。

鵜澤:日本の建設コンサルタントの中ではかなり現地化が進んでいる会社だと思っています。

2030年に向けた、長期経営戦略「共創。限界なき未来に挑む」では”Think Globally, Act Locally”をキャッチフレーズにしています。「グローバルに物事を考えて、ローカルベースでアクションを起こす」という意味なのですが、全社的にこの動きをどんどん進めています。

我々は長年、日本の開発援助のスキームを通じて、資金的余裕がない途上国や新興国で社会インフラの開発に従事してきました。例えば当該国で下水道や道路、港を作る資金がない場合、日本から円借款、つまりお金を借りて、インフラを開発するのですが、この場合「日本の技術を売り込む」アプローチが強いのです。その思想が強くても、ここ数年公開されている国別競争力に関する指標から、今は“日本の”という形容詞は必ずしも諸外国に魅力的に映らないのです。だからこそグローバル目線で考えて、世界でいいものをローカルのニーズに合わせて提供していきましょうと、最近は力を入れています。個人レベルでも会社レベルでも、この現地化はかなり重要なポイントだと思っています。

武藤:ローカルベースでアクションを起こすというのは、その人たちの働き方や生活スタイルを見て目線や考え方を合わせるのでしょうか。

鵜澤:そうですね。シンガポールは様々な国の人たちがいるのでグローバルスタンダードの環境に自分たちが合わせて働かなきゃいけないですし、そこに合わせた労働環境を整備しなきゃいけないと思っています。 その代わりアウトプットはきちんと出すようにお願いしています。

内藤:アウトプットのコントロールは難しくないですか。

鵜澤:今のメンバーはハイクラスで個人の力が非常に高く、皆グローバルマインドで、誰が相手でも自分の思っていることを発言し、お願いしたものの120%で返してくれるので、助かっています。

ただ、間違いなくジョブホッピングの世界なので、そういう人材を維持するのは大変です。データサイエンティストも雇っているのですが、彼らは特に移りがちです。給料では勝負できないので、毎年契約交渉をしますが、彼らのやりたいことや目指しているものを聞き、それに対して我々が貢献できるものをできる限り提供する目線にしています。

もちろん会社の戦略やビジネスモデルから大きく逸脱することはできませんが、やりたいことを提案してくれたらできる限り協力する旨を伝えています。おかげさまでNUSやシンガポール工科大学からコンピュータサイエンスを習った人たちがインターンで来てくれて、そのまま新卒で入りたいと言ってくれる人たちも出てきているので、そういうアプローチが刺さっているのかもしれないですね。

内藤:鵜澤さんのことは日本の皆さんは知っていると思いますが、他のスタッフの方のビジビリティを日本側であげるために何かされていますか。

鵜澤:はい。自分たちはシンガポールだけじゃなく、グローバルに役に立っているという意識も与える為に、年に一度出張に連れていったり、本社を含む海外グループ会社各社のイベントにもプレゼンターとして彼らを出して説明させたりしています。

英語でプレゼンしますが、通訳は入れていません。悩ましいところですが、そこには時間をかけないようにしています。日本人がマジョリティーの会社なので、英語のコンテンツだと翻訳や通訳が必要と議論になりがちですが、そこに甘えちゃいけないと思っています。

我々がインドネシアのバハサ語に翻訳をしないように、日本も同じだと考えています。日本語にしたければ、必要とする人達の時間とコストとマンパワーでやってもらう方針です。なので、我々が企画するイベントは全て英語にしています。私も全部英語で資料を作っていますが、それを日本語に訳すことは一切していません。

日本のスタートアップがなかなか海外に出にくいと聞いたときに、色々な理由があると思いますが、日本のマーケットが大きいから日本仕様になってしまっているのもあるし、言語やカルチャーの問題がある。うちも6割ぐらいの収益は日本のマーケットから来ているので、その技術を海外にそのまま持ってくるのは、難しいし、コストと時間がかかってしまいます。

それなら初めからグローバル目線で作ったものをグローバル展開した方が、結果としてコストと時間はかからないはずだと思っているので、ヘッドクォーターが日本だから海外事業も日本仕様に合わせるというものではなく、グローバル展開できるソリューションをもって、それぞれの国でローカライズしていくことでインパクトを最大化させる戦略です。

我々もグローバル化は道半ばですが、最近は、海外の各現地法人の成長が著しく、中央集権的に日本で全部コントロールするよりは、各拠点がそれぞれアイデンティティを持って自分たちでビジネスを拡大する戦略に変わってきています。日本人に限らないマネジメントスタッフをどんどん増やして、そこに対してこれからどうやってグローバル化を加速させていくのかが課題です。

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