経営者インタビュー
経営者に聞く「日本工営ビジネスパートナーズ株式会社 シンガポール事務所 鵜澤邦泰所長」トップインタビュー
パナマでの経験
武藤:もう少し鵜澤様についてお伺いします。シンガポールの前はパナマにいらっしゃったとのことですが、詳しくお聞かせください。
鵜澤:シンガポールに来る前の2009年頃から7年間ほど中南米のパナマに駐在していました。
2006年に日本工営に新卒で入社した当初から海外、特に途上国で開発援助の仕事に就きたい思いがあり、就活中にJICAの方から日本工営を紹介してもらいました。
うちの会社は元々理系の会社なので、文系の私ができることは営業やバックオフィス等が多く、入社当初は余剰資産運用管理の部署に配属になりました。たまたま3年目になったときに、パナマの地域統括会社で経理のポジションがあるから、行ってみないかと言われたのがきっかけです。
パナマの生活は本当に面白かったです。出向当初は中南米各拠点を合わせて全体のオペレーションで大体600人ぐらいいて、日本人は私含めて2人しかいませんでした。地域統括会社の財務や経理以外にも、メキシコからアルゼンチンまでの各子会社・事務所の会計管理や営業、また後半は統括会社のアメリカ人社長の秘書もしていました。
2015年に日本に帰ってきて、本社の海外事業の営業担当を3年ぐらいやりましたが、中南米に経験がある人が少ないので結局日本にいながらも中南米の仕事をしていました。
シンガポール事務所の立ち上げ当初に、上司からシンガポールに来てみないかと誘われたのがきっかけで2019年からここにいます。日本工営の海外事業は日本の開発援助、アジアがメインのフィールドですが、私は全く逆のところから今ここにいるので、全然メインストリームではないです。それはある意味自分の中で良かったなと思っています。
当時パナマでフル現地化が進んだオペレーションをだいぶ早い段階で体験してきて、アジアに戻ってきたときもそれが当たり前の環境にしたかったので、シンガポールでもそういうアプローチを積極的にとっていこうと思いました。
内藤:パナマでのご経験でよく話しているエピソードがあれば教えてください。
鵜澤:在パナマ日本大使館のお食事会で大使から共有していただいた15年くらい前の話なのですが、どこかのアメリカのリサーチでパナマ人が幸せ度No.1だったそうです。
理由は、言い方は悪いですがパナマ人の目標設定が低いからだそうです。お腹いっぱい食べたいとか、明日遊びに行きたいとか。明日の目標設定が低いから、毎日なりたい自分になれる。
日本人は目標値が高すぎて、そこのギャップが埋めきれず、病んでしまったりするケースもあるじゃないですか。同じ人生なのに、気持ちの持ち方でだいぶ心のゆとりとパフォーマンスが変わってしまう。それならパナマ人の方が幸せでしょ、という話を聞いて。この話を社内のマネジメント研修で話した時に、他の管理職から、ちょっと考え方変えるだけで気持ちが楽になり、いいパフォーマンスを出せるのなら、パナマ人的アプローチはありかもしれない、いいねと言っていましたね。目標を高く設定するのは簡単ですが、マイルストーンを設けて、なりたい自分になれるレベルを毎日段階的に設定して積み上げれば、メンタルヘルスも充実し、より成果が出せるかもしれないというエピソードをよく話しています。
「ジェネラリストのスペシャリスト」こそ、マネジメントにおいて大事な役目
鵜澤:新卒や入社したてのメンバーと話す機会もありますがみんな志が高く、海外でバリバリ働きたい思いで来るので、ギャップがあるわけですよ。
私が説明しているのは、専門家が沢山いる中で、最近は世の中のニーズが複雑化し、例えば交通の専門家が交通だけの課題を解決することは求められていなくて、色々なことを一緒に解決しなきゃいけない世の中になっている。そうなると、ステークホルダーマネジメントやプロジェクトマネジメントする人が必要です。
お客さんの目の前に立ってニーズを聞き出し、いかに最適なリソースをタイムリーに持ってこられるか。昔は理系や専門性を持っている人たちが羨ましく思えましたし、今でも専門性に長けたエンジニアの方々を尊敬していますが、若いころシニアの方に、「ジェネラリストのスペシャリストになればいいじゃん」と言われた言葉が今でも刺さっていて、「なるほど」と納得しました。
なんでも屋のスペシャリストになるというのは、キャリアを積み上げていったときに大事な考え方だと思いますし、やはり専門家の専門知識には勝てないですから。逆にその人たちのパフォーマンスを最大限発揮できるフィールドを見つけ、うまくアサインしてあげる立場に、今は面白みを感じています。あとは、ビジネスは結局お金が絡むので、会計から入ったのは潰しが利いて物事を進める上では良かったと感じています。