経営者インタビュー
経営者に聞く「日本M&Aセンター海外事業部ASEAN統括 尾島悠介氏」トップインタビュー

父と弟から影響を受けたアイデンティティ
武藤:尾島様の生い立ちやキャリアについてお聞かせください。
尾島氏:私は2つ下の弟がいるのですが、幼い頃は本当に仲が悪かったんです。弟は勉強もサッカーも何でもできるタイプで、私が中学3年でようやく獲得したサッカーのレギュラーも、彼は中学1年であっさりと獲得するような存在でした。常に勝てないという悔しさがあり、「何か自分が勝てるものを見つけたい」という気持ちは自然と芽生えていました。負けたくないという思いが私の原動力になり、「これだけは負けない」と言えるものがない中で、最終的に「海外での経験」が自分の強みになったと感じています。
また、幼少期から「商売」はとても身近なものでした。親が繊維の商社を営んでおり、家と会社が同じ場所にあったこともあり、小学生の頃から在庫チェックや欠品チェックなど、自然と仕事の手伝いをしていました。取引先も多岐にわたり、物流会社やデザイナー、仕入れ先企業など、さまざまな業界の人々と接する機会がありました。また、後継者を育てる意図もあってか、親は海外出張にも私を同行させてくれました。この経験を通じて商社のマインドセットを身につけ、大学時代もアルバイト先で学生リーダーや採用活動、新店舗立ち上げの拠点長を務めるなど、仕事に対する適応力を磨きました。稼ぐことの楽しさやチームで働く喜びを知ったことで、今でも仕事を苦に感じることはほとんどありません。
もう一つの大きな経験が「海外」です。幼少期の海外出張同行に加え、学生時代にはアルバイトで貯めた資金を使ってバックパック旅行やイギリス留学を経験しました。さまざまな国の人々と協力しながら何かを成し遂げることに興味を持ち、それが海外で働く大きなきっかけとなりました。特に東南アジアの街のエネルギーは日本とは全く異なり、活気に満ちた成長市場に身を置くことの重要性を学生時代から感じていました。その思いを胸に、新入社員としてユアサ商事に入社し、当時は「日本と世界のためにモノを繋ぐ」ことをミッションとしていました。現在は企業同士を繋ぐ仕事をしていますが、根底にあるのは変わらず、「グローバルな環境で価値を生み出す」という強い思いです。
内藤:幼少期から商売が身近な存在だったのですね。お父様とご一緒された出張で思い出深いエピソードはありますか?
尾島氏:中国の大連です。父の会社のパートナーさんの工場に1,000人近くの従業員がいて、英語も中国語も拙い父が彼らをまとめ上げていたんです。カタコトでもちゃんとリーダーとしてこれだけの従業員を引っ張っていたのがとてもかっこよく見えました。規模の小さい中小企業でも、取引先に大手のお客様がいて、それが実現できるのは人間力だと思っています。そういう意味で、自ら発信する努力やPR活動をするのは大事なのだと、父の背中をみて学びました。
内藤:商売の楽しさを感じたエピソードなどあれば教えてください。
尾島氏:学生時代にアルバイト先のカフェでテイスティングや他社の豆を使用した比較などの勉強会を実施して、サービスや商品を発信して購入してもらうことにやりがいを感じていました。一対一で地道に売り込むより、大勢の人にプレゼンテーションをして興味を持ってもらう、自分にしかできないことを積極的に行っていました。現職でも海外のビジネスオーナーに対してセミナーを開催したり、ラジオに出てPR活動をしているのはその頃の影響もあるかと思います。