経営者インタビュー
経営者に聞く「日本M&Aセンター海外事業部ASEAN統括 尾島悠介氏」トップインタビュー

採用と育成への心掛け
内藤:基本的に営業ができる方を採用されているかと思いますが、M&A業務が未経験の方もいらっしゃるかと思います。採用や育成に関するご苦労はありましたか?
尾島氏:我々はM&Aの経験は必須条件としていません。重要なのは、しっかりと営業ができること、そして中小企業のオーナーと円滑にコミュニケーションを取れるスキルを持っていることです。こうした条件に合致する人材としては、金融機関や法人営業の経験者、保険の代理店業務の経験者が多いですね。
ただ、採用の際に最初からM&Aに興味を持ってもらうのは簡単ではありません。そのため、我々もM&Aの業界としての魅力、市場の成長性、そして成功すれば大きく稼げる点などを、情熱を込めて伝えることを常に意識しています。
現在では私も何十人もの面接を担当していますが、採用活動を始めた当初は、相手のことを理解した後の面接時間のほとんどを使って、私自身が会社の魅力を売り込んでいました。それでも、M&Aの可能性を熱く語っても断られることが多く、特に「本当に来てほしい」と思った人材に断られたときは、かなりショックを受けました。まるで自分が否定されたかのような気持にすらなりましたね。
成功事例が増えてくると、入社を希望する人も徐々に増えました。当社では、年に一度、予算達成者を対象とした海外研修制度を設けています。達成額に応じて、ロンドンやマレーシアなどに優秀な営業マン30〜40名を招待し、研修を実施しています。毎年、この場でキャリア形成やビジネス立ち上げの醍醐味について説明することで、人材育成に力を入れています。
私たちは、将来的に彼らにも海外で活躍してもらいたいと考えています。現在、海外案件が増加しているため、彼らが海外の買い手を見つけ、より身近に国際ビジネスを感じてもらうことが重要だと考えています。そのため、この研修を通じて、海外市場の魅力や成長機会に触れ、興味を持ってもらえるよう努めています。
日本人スタッフが成功事例を紹介しても、「あなたは日本人だからできたんでしょう?」と現地の候補者に思われることがありました。そのため、ローカルスタッフが成功した際には、その事例を積極的に発信してもらい、「現地で働くスタッフがどのように成長し、成果を出せるのか」を具体的に伝えるよう心がけています。
また、急速に事業規模が拡大する中で、言語面での課題にも直面しています。シンガポールは英語が公用語ですが、ベトナムやタイではスタッフは英語を話せても、企業オーナーが英語を話せないケースもあります。そのため、各国の市場や言語環境に対応しながら、円滑なコミュニケーションが取れるよう日々努力を続けています。
内藤:業種としても人材が唯一のアセットといえますし、これまでも人材マネジメントには力を入れてこられたのだと思います。各国の立ち上げメンバーは現在も残っていらっしゃいますか?
尾島氏:はい、ほぼ残っています。2017年に入社したシンガポールメンバーは未だに残っていますね。マレーシアも2020年の立ち上げからほとんど残っていますね。ジョブホッピングの社会では通常2-3年くらいで転職したりする傾向がありますが、皆さん長く居てくれています。