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Trend Reports

【セミナーレポート】「現法企画力」を鍛え、今アジアの変局を勝ち抜く(前半)

中国・ASEAN・インドを取り巻く事業環境が急速に変化するなか、日系企業の現地法人はどこで・どう勝負すべきか――。

Speedaセミナー「アジアの変局を勝ち抜く―現地法人の企画力と連携・協力の実践知―」では、日系企業の中国・アジア展開を支援してきたコーポレイトディレクション(CDI)の是枝邦洋氏・厳偉氏をお招きし、構造転換期のアジアを勝ち抜く、「現法企画力」について解説していただきました。セミナーのレポートは前半・後半に分けてお届けします。

本記事では、是枝氏講演の内容をお届けします。(後半パートはこちらからご覧ください。)

※本内容は、2026年6月4日開催セミナー「アジアの変局を勝ち抜く―現地法人の企画力と連携・協力の実践知―」の内容を再構成したものです。


構造転換期のアジアで求められる「『現法』企画⼒」とは?」

アジアの構造転換 ―― 「戦後」から「ポスト戦後」へ


 

是枝氏: 戦後、アメリカを中心に築かれてきた自由貿易の時代は、終わりを迎えつつあります。日本企業はその中で、戦後のアジアでの相対優位を活かして勝つことができていた「全方位展開」の時代から、現地企業が本格的に台頭する「厳選展開」の時代への転換を迫られています。世界の貿易輸出・輸入額がGDPに占める割合の推移から見て、2008年以降は「スローバリゼーション」(※グローバリゼーションのスピードが鈍化している状態)と言われています。その中で、アンガス・マディソンによる世界GDP構成比の推計を見ると、産業革命を経て台頭した欧米に代わり、再び中国・インドを中心とする「アジアの時代」が見えています。

出所:VOX〔2010〕/Angus Maddison(是枝氏講演資料より)

 

実際に、BYD・安踏(ANTA)・美的(Midea)・小米(Xiaomi)といった中国企業が、中国経済は頭打ちと言われた局面でも成長を続けていることからも、この転換期を読み取ることができます。

出所:有価証券報告書/Speeda (是枝氏講演資料より)

 

アジアのさらなる発展は「見えている未来」ですが、現地企業の本格的台頭と多極化が進む「ポスト戦後」では、展開できる場所に広げる全方位モードは通用しません。勝てる場所を絞り、そこで徹底的な現地化やM&Aで拡大する「厳選展開」が必要です。ただしこれは資源配分の変更を伴うため、経営層(資源と権限の配分)と現地法人(現地での差別化)の「二人三脚」でしか実現できません。

 

「厳選展開」モードでは、経営層と現地法人の二人三脚が必要

是枝氏講演資料より

現地法人が抱える課題と解決策


 

今、現地法人が抱える課題は大きく二つです。

一つ目は「機能上の五体不満足」です。 多くの日系現地法人が、生産あるいは販売の拠点として事業を開始し、後からマーケティングなどの機能を足してきたものの、商品開発の機能までは持っていません。一方、現地競合は開発・生産・販売・マーケティング・経営企画の機能をすべて持っていることが当たり前です。このように、機能が揃わない状態で、フル機能を持つ現地企業を相手に戦う構図そのものが苦しいのです。

二つ目は「本社・現地間連携の五体不満足」です。本社側は「もっと大きく儲かるビジネスをやってほしいのに、現地法人は小さい話ばかりする」と考える一方で、現地法人は「市場が成熟してきたことで、自社の得意な分野でのニーズも生まれた。しかし現地企業が強く、本社からの後押しも欲しいが得られない。だから小さい話しかできない」と感じています。この“神経の断絶”をどう接ぎ直すかが、最大の論点なのです。

この課題の解決策が、「現法企画力」を鍛えることです。 以下にご紹介する3つのステップを踏むことで、少しずつ本社の注意と投資を呼び込むことができます。

是枝氏講演資料より

 

「現法企画力」を鍛える三つのステップ


 

一つ目のステップは、本社が関心を持つ規模の「大きな絵(成長戦略構想)」を描くことです。 まず大風呂敷を広げ、本社が関心を持つ規模の事業構想(成長戦略構想)を描きます。具体的には、普段相手にしている顧客層(ハイエンドのみ→ミドル・ローエンドへ)、バリューチェーン(原材料・部品〜組み立て〜販売〜アフターサービス)、達成方法(自社単独/M&A/資本・業務提携、日系か中国系か、データ統合・プラットフォーム化)といった軸で、事業領域を思い切って拡張します。大がかりな外部調査は不要で、現場が持つ肌感覚をまとめれば描けることが多いものです。

その次に、描いた構想の実現に向けて、以下3つの「現地」をフル活用して「小さな実績」を創出していきます。

是枝氏講演資料より

活用すべき3つの「現地」


 

  1. 現地競合ベンチマーク ——「3つの現地」の一つ目は「現地競合ベンチマーク」です。例えば間接部門比率を比べると「競合は間接13%/自社は30%で、自社が17ポイント重い」といった差が可視化され、さらに内訳を見ると、競合は事業成長に直結するHRBPやFP&Aといった人材を厚めに配置している、といった気づきが得られます。
  2. 現地従業員サーベイ —— 二つ目は「現地従業員サーベイ」です。経営層・ミドル層(次世代幹部候補)・若手有望層から計20名程度を選び、経営戦略・組織設計・人材・本社連携の観点を匿名で評価します。「経営陣の判断は概ね正しいと思うが、決定の背景が一部の日本人経営層の間だけで共有され、現地には結果だけが伝わる」「提案を求められたのにフィードバックがない」といった本音から、組織のボトルネックと“次の成長の芽”が浮かび上がります。
  3. 現地企業との提携 —— 最後三つ目は「現地企業との提携」です。急成長する現地企業のナレッジとリソースにレバレッジをかけ、単独では不可能なスピードで初期実績をつくり出すことができます。

このように、3つの「現地」を使ったうえで、最後に本社を巻き込んでいく必要があります。その時にポイントとなることは、本社側の言葉で語っていただく必要があるということです。

「中国事業はこうすれば売上が上がる」という話だけではなく、利益はどうなるか、投資効率はどうなるか、ESG投資はどうか、といった話し方をしなければ、本社側は意思決定ができないのです。

このように、大きな絵を描き、小さな実績を積み上げて、本社からの注意を引き投資を呼び込むことで、現地の企業と戦えるだけのリソースをしっかりと呼び込む。これができる企業は本当に経営陣の方がうまくやっていらっしゃると思います。

本社からのリソースを呼び込むことは、現地法人のトップの方に任された大きな仕事の一つだと思います。皆さま、ためらわずに大きな絵を描きながら、小さな実績を少しずつ積み重ねていくことで、世界で一番競争が激しいと言われる中国で価値を勝ち取っていきたいと心から思っています。

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