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生成AI時代、なぜ情報が意思決定に結びつかないのか

情報は増えているのに、意思決定が進まない

AIが普及する以前、海外の現地法人拠点で活躍する経営企画部門などでは、現地のニュースや業界動向をいかに効率良く・信頼できる現地の情報として把握するかが大きな課題でした。言語の壁もあり、情報を集めること自体に時間がかかっていたのです。

AIの翻訳・検索・整理能力が向上したことで、この状況は大きく変わりました。日々流れ込むニュースや企業情報など、情報の取得は以前よりずっと容易になっています。しかしその一方で、多くの企業では生成AIを業務で利用しているものの、そのアウトプットを戦略の意思決定に結びつけるところまでは至っていないのが実情です。

生成AIの業務活用そのものは着実に広がっています。ただ、そのアウトプットだけでは信頼して使えるレベルまで至らず、あくまで参考程度にとどめている企業も少なくありません。情報を集める力は、生成AIによって確かに底上げされました。次に問われているのは、その情報をどう読み解き、アクションにつなげていくかという力です。

AIは情報収集を効率化させてくれた。しかし「賭けられる根拠」は作ってくれない

この実感は、データからも裏付けられます。Speedaが実施した「経営企画白書2026」の調査によると、経営企画部の生成AI利用率は87.1%に達し、昨年の76.9%から大きく上昇しました。業務での生成AI活用は、もはや当たり前になりつつあると言えます。

一方で、興味深いのは次のデータです。経営企画業務における「意思決定」の局面で、生成AIのアウトプットを「ほぼそのまま使える」と回答した人は、13.0%にとどまりました。これは昨年の21.9%からむしろ低下しています。代わりに8割を超える回答者が、「参考にする程度(アイデアや方向性の参考にはなる)」と答えています。つまり、生成AIの活用は広がっているにもかかわらず、「意思決定にそのまま使える」という信頼感はむしろ薄れているのです。

さらに注目したいのは、業績の良い企業では、40.8%が生成AI普及後も既存の情報サービスの契約を維持していました。その理由として最も多く挙げられたのが、「生成AIでは専門性・正確性が不十分」でした。

これらのデータが示しているのは、AIの普及が進むほど、逆説的に「情報の質」への投資をやめない企業ほど業績が伸びているという構図です。生成AIは情報収集のスピードを飛躍的に高めてくれます。しかし、経営会議の場で「なぜこの戦略なのか」を裏付ける根拠までは、AIだけでは作ってくれません。AIを日常的に使う前提に立ったうえで、それでも独自の分析基盤を必要とする理由は、まさにこの「賭けられる根拠」をどう作るかという点にあります。

出典:Speeda「経営企画白書2026」定量調査。n=618、大企業の経営企画部門役職者対象

地域横断で見えてくる、業界構造という切り口

情報はただ集めれば良いというものではありません。集めた情報を戦略に落とし込むためには、適切な切り口で読み解いていく作業が欠かせません。

一つの例として、アジアでの製造業のサプライチェーン再編を業界軸で見てみましょう。「サプライチェーン見直し」という同じテーマであっても、東南アジア域内での役割は国によって大きく異なります。

例えば、ベトナムは、電子機器やアパレルといった労働集約型の製造拠点として、生産移管の受け皿になりやすい立ち位置にあります。タイは、自動車・自動車部品を中心に、すでに集積したサプライヤー網とインフラを持つ、既存の製造ハブとしての強みを持っています。シンガポールは、製造拠点というよりも、地域統括・金融・研究開発といった、より付加価値の高い機能の拠点としての役割が中心です。

つまり、「東南アジアへのサプライチェーン移管」という同じニュースであっても、業界の中でどの機能・工程が対象になっているかによって話は変わります。影響を受ける国も、取るべき打ち手もまったく異なるのです。国単位のニュースだけを個別に追っていては、こうした「業界内での役割分担」という構造が見えにくく、自社の戦略立案に必要なインサイトを見落としてしまうリスクがあります。

こうした情報は、AIを利用した定期的なスポットの情報収集では見落としてしまう可能性があります。個別の国のニュースを追っているだけでは、政策・規制・サプライチェーンがどう連鎖しているのか、その全体像をつかむことは難しく、専門家のインサイトや業界の動向を地域横断で見ていくことで見えてくる視点があります。

意思決定に必要なのは、情報の量ではなく「視点」

新規市場参入のために、業界構造や競争環境を把握したい場面を考えてみましょう。まずは業界の全体像を素早くつかんでおきたいというニーズは、経営企画の実務では日常的に発生します。ニュースや企業情報、法規制、国ごとのトレンドといった情報は、個別に取得すること自体は可能です。しかし、ソースは散在しており、情報源によって信頼性にもばらつきがあります。

こうした場面で本当に必要なのは、情報をさらに追加することではありません。すでにある情報を、業界概要・市場環境・競争環境といった構造で整理し、全体像とアクションにつながる論点を見つけ出す「視点」です。

もちろん、簡単な情報の取得や整理であれば、AIを使うことも可能です。しかし、こうした「アクションにつながる情報」への整理は、AIだけでは実現が難しい領域です。正確な情報と、構造化が組み合わさって、初めて意思決定に使える形になります。市場性・競争優位・実現難易度といった複数の軸で評価すること、専門家ネットワークを通じた現地の非公開に近い情報に触れること――こうした視点は、公開情報の要約だけでは得られないものです。

まとめ - 情報を絞り、視点を増やす

AIは情報を処理し、業務を支えるパートナーとして進化を遂げました。経営のスピードを上げ、強固な意思決定を行うためには、AI×情報基盤の活用が欠かせません。ここで重要なのは、「情報をより多く収集する」のではなく、意思決定に使える「視点」を持つことです。

情報を減らすということではありません。むしろ、増え続ける情報の中から、今の意思決定にとって本当に重要な切り口を見極め、経営層や現場が納得できる形に仕上げていく力が、これまで以上に問われています。

Speedaは、共通のデータ基盤から取得した高品質で独自の情報を、専門知識を持つアナリストが執筆したレポートという形で提供し、戦略を立てる「視点」を持つためのリサーチを支援する情報基盤です。ビジネスの意思決定に役立つ情報を見極めてお届けすることで、皆さまには戦略の分析と意思決定に、本来の時間を使っていただけるよう支援します。

〔ここに画像:Speedaのレポートのイメージ図〕

情報の「量」で差がつく時代は終わりつつあり、これからは情報をどう読み解き、どう組織の意思決定に翻訳できるかという「視点」の質で差がつく時代です。皆さまの事業戦略の次の一手を、確かな視点で後押しできればと考えています。

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